著者
久保田 祐歌
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.63-70, 2013-03-31

高等教育においては、「21世紀型市民」の育成や高等教育のグローバル化(学位の国際通用性)、大学のユニバーサル化、質保証への対応という観点から、学士課程の学習成果(ラーニング・アウトカムズ)が求められるようになっている。そうした背景から、エンプロイヤビリティの意味合いを含むジェネリック・スキルの概念が、高等教育のカリキュラムに導入されるようになってきている。海外においては、学生の生涯に渡る発達という観点から大学における教育目標を定め、カリキュラムにおいてそれを涵養する組織体制づくりが進んでいる。日本においては、ジェネリック・スキルの教育目標の設定とカリキュラムの検討、専門教育と教養教育のそれぞれにおけるジェネリック・スキル教育目標の連関の検討という課題がある。ジェネリック・スキルを育成する教育は、教育方法の転換を伴うため、大学全体としての組織体制づくりを必要とする。しかし、大学生にとっては広い文脈の中で、自分の専門分野での学習を社会へと関係づける経験が可能となるため、極めて意義深い取り組みと言える。
著者
久保田 祐歌 KUBOTA Yuka
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.253-268, 2010 (Released:2010-05-27)

本稿の目的は、クリティカルシンキング教育をカリキュラムや授業レベルで考察している文献を調査し、学士課程の学生のクリティカルシンキングをどのような授業で涵養すべきであるかを検討し、そのためには教員個人の取り組みだけでなく、組織的な取り組みも不可欠で あることを示すことである。 最初に、米国でクリティカルシンキング教育が哲学における論理学の授業で行われていたことや、マックぺックの提起した、クリティカルシンキングを教える際には学問分野の教育内容等が必要となるという議論を検討する。次に、現在はあらゆる学問分野でクリティカルシンキング教育が展開されるようになっていることを紹介する。さらに、クリティカルシンキング教育をあらゆる学問分野で行う際の論理や授業にクリティカルシンキングを涵養する活動を取り入れる際のガイドラインを検討する。 クリティカルシンキングを養成する授業をカリキュラムに組み込む際、どのような方法がふさわしいかについては、クリティカルシンキングスキルそのものを教える授業と、各分野の授業で行う方法とを検討した。最後に、2つの大学の事例を紹介することにより、クリテ ィカルシンキング教育をより効果的に行うためには、カリキュラムレベルでの組織的な取り組みが効果的であることを示した。 The purpose of this paper is to show whether undergraduate students’ critical thinking skills can be fostered by what class and curriculum by examining the literature of critical thinking. First, this paper shows that critical thinking education in the United States started with teaching logic in philosophy classes and has been developed in a variety of academic disciplines. This transition was influenced by McPeck’s view that thinking is always about some particular object or subject. Logic and guidelines for teaching critical thinking have also been introduced in a variety of academic disciplines. This paper examines the effectiveness of approaches for fostering critical thinking, including a general approach, an infusion approach, and a mixed approach. By using two case examples, this paper shows that not only individual efforts but also institutional efforts are indispensable in developing students’ critical thinking skills fully.