著者
志水 廣
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.5, pp.77-83, 2015-03-31

小学校の児童が算数を学ぶ上で,算数科にかかわる数学言語(算数語彙)について,どの程度正確に理解しているかについて調査した。調査分野は,小学校下学年,「数と計算」の領域について算数教科書に登場する算数の用語・記号とそれらを規定する言語も含めて算数語彙とした。1つの算数語彙に対して5問の選択肢を用意して児童に選択させる問題(語彙テスト)を開発した。調査問題は,予備調査(175名)に基づき本調査(975名)を実施した。その結果,算数語彙に対して理解度の低い問題が見つかった。例えば,1年生の語彙「3人に2まいずつ」の正答率は66.9%,2年生の語彙「4この2つぶん」の正答率は18.1%,3年生の語彙「3人に分ける」の正答率は59.4%,語彙「はした」の正答率は52.9%であった。
著者
三上 真葵 中妻 雅彦
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.2, pp.37-45, 2012-03-31

歴史教育者協議会会員で、中学校社会科教師であった安井俊夫は、「スパルタクスの反乱」の一連の授業実践をとおして、生徒が、奴隷たちに共感でき、そのイメージを描くことができるようにするような教材や発問を提示することで、「自分の目」で歴史を学ぶことができ、それは暗記で終わらない「自分の知識」を残すことになると主張した。さらに「スパルタクスの反乱」の実践の反省をふまえ、「福島・喜多方事件」を題材にした授業では、自由民権運動の道を抑圧される者の立場からだけではなく、政府側からも考察できるような教材や発問を考案している。このような安井の主張を基にした実践は非常に意味のあるものとされたが、これらの実践は70年代、80年代に行われたものであり、現代の子どもたちの実態に合わせて改善する必要があるという見方もある。本稿では、安井実践の意義を安井俊夫へのインタビューによって再評価し、現代の子どもの実態にそくした社会科教育のあり方を考察する。
著者
久保田 祐歌
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.63-70, 2013-03-31

高等教育においては、「21世紀型市民」の育成や高等教育のグローバル化(学位の国際通用性)、大学のユニバーサル化、質保証への対応という観点から、学士課程の学習成果(ラーニング・アウトカムズ)が求められるようになっている。そうした背景から、エンプロイヤビリティの意味合いを含むジェネリック・スキルの概念が、高等教育のカリキュラムに導入されるようになってきている。海外においては、学生の生涯に渡る発達という観点から大学における教育目標を定め、カリキュラムにおいてそれを涵養する組織体制づくりが進んでいる。日本においては、ジェネリック・スキルの教育目標の設定とカリキュラムの検討、専門教育と教養教育のそれぞれにおけるジェネリック・スキル教育目標の連関の検討という課題がある。ジェネリック・スキルを育成する教育は、教育方法の転換を伴うため、大学全体としての組織体制づくりを必要とする。しかし、大学生にとっては広い文脈の中で、自分の専門分野での学習を社会へと関係づける経験が可能となるため、極めて意義深い取り組みと言える。
著者
石川 恭 加藤 玲香
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.19-25, 2013-03-31

本稿は、小学校低学年において、学習指導要領の目標を基準に、体育科の授業に伝承遊びを導入することの効果を、現代社会の子どもたちが直面している様々な問題との関わりから考察することを目的とした。また、日本古来の伝統文化である伝承遊びの意義についても考察した。これらは、今の子どもたちが抱える社会問題を解決する方策となり得る可能性をもつと思われるからである。先行研究を調べてみると、伝承遊びについては、幼児教育における伝承遊びの意義や導入、民俗学や社会学あるいは文化人類学などの分野で伝承遊びの特質や分類などが研究されている。また、日本における伝承遊びの実態などの調査研究はある。これらから、本課題について取り組む意義があるといえる。研究方法は、文献研究によった。平成20年改定の小学校学習指導要領解説・体育編と伝承遊びに関する様々な文献をもとに、学校体育、文化、遊びに関する文献などを加えて考察を行った。その結果、以下の考察に達した。学習指導要領にある改訂の基本方針と体育科の6領域について検討した結果、伝承遊びの導入がいずれにおいても可能であるといえた。体つくり運動では「けんけんずもう」、器械・器具を使っての運動遊びでは「馬のり」、走・跳の運動遊びでは「けんぱ」、水遊びではプールの中での川づくり、ゲームでは「たすけ鬼」、表現リズム遊びでは「電車ごっこ」が、学習目標に照らしてみた場合、有効であると考えられた。これらは、現代社会を生きる子どもたちが直面している様々な問題を解決する手だてとなり得る。また、伝承遊びの実践は、日本の伝統文化の保存・伝達、和の精神的価値を顧みる契機ともなる。
著者
川上 昭吾 長沼 健 廣濱 紀子 山中 敦子 稲垣 成哲
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.131-137, 2013-03-31

蒲郡市生命の海科学館では、たくさんのサイエンス・ショーやワークショップを実施している。ワークショップ等に参加する人数は、平成22年度は7,640名、平成23年度は14,910名に上っている。しかしながら、幼児や低学年児童が満足する内容とするためには工夫が必要である。そこで、絵本の読み聞かせを行い、併せて絵本の中の実験を実施することで興味を湧かせたり、学びの深化が可能になるのではないかと考え実践に移したところ、参加者は予想通り絵本に興味を持ち、活動に意欲的に参加した。科学館等での新しいワークショップの在り方となることが明らかになった。