著者
太田 浩良 羽山 正義 金子 靖典 松本 竹久 川上 由行 熊谷 俊子 久保田 聖子 勝山 努
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-47, 2006-01-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
50
被引用文献数
1

Helicobacter pylori (H. pylori) は、1983年にWarrenとMarshallにより慢性胃炎患者の胃粘膜より分離培養されたグラム陰性菌である。H. pyloriの発見は、胃疾患をめぐる状況に劇的な変化をもたらした。慢性胃炎がH. pyloriという起炎菌による感染症として理解されるようになり、さらに, H. pyloriが胃十二指腸潰瘍、さらには胃癌、胃悪性リンパ腫に関連する重要な因子であることが明らかにされてきた。H. pylori感染胃粘膜にみられる病理組織学的変化は, 細菌側の因子とこれに対する宿主側の反応が絡み合って形成される。胃炎惹起や胃発ガンのメカニズムの解明が分子レベルで急速に進んでいる。H. pyloriの感染診断法には, 内視鏡検査を必要としない非侵襲的検査法 (尿素呼気試験、抗体測定法、便中抗原測定法) と, 内視鏡検査を必要をとする侵襲的検査法 (迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法) がある。それぞれの検査法には長所や短所があるのでその特徴を理解した上で選択することが肝要である。