著者
細谷 孝博 久保田 通代 熊澤 茂則
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.321-329, 2016-06-05 (Released:2016-07-07)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

アントシアニンは,ベリー果実等に含まれる色素成分の一種で,昔から天然着色料として幅広い食品に利用されている.また近年では,アントシアニンの様々な生理機能に関する研究も行われており,機能性成分としての利用も期待されている.本研究では,アントシアニンを豊富に含むベリー果実について,定量核磁気共鳴法(定量NMR)を用いた分子種解析によるアントシアニン成分の評価を行った.まず各ベリー果実抽出物の1H-NMRスペクトルより,各アントシアニン成分の定性及び定量分析を行った.続いて同スペクトルを用いて主成分分析を行ったところ,各アントシアニンによる分類分けに成功した.また,Oxygen Radical Absorbance Capacity(ORAC)法を用いて各ベリー果実抽出物の抗酸化活性を評価し,アントシアニン成分の種類と含有量,さらに,主成分分析から得られた結果に相関関係を認め,シアニジン系のアントシアニンが抗酸化に寄与することを明らかにした.1H-NMRを用いた本分析手法は,ベリー果実の品質管理や機能性を有するベリー果実をスクリーニングするための有用な手法であると言える.