著者
猪股 正秋 照井 虎彦 遠藤 昌樹 久多良 徳彦 千葉 俊美 折居 正之 鈴木 一幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.1556-1567, 2005

内視鏡的十二指腸乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy;以下EST)において出血を避けるためには,切開方向,高周波の出力波形の問題に加え,切開線周囲の凝固層の範囲をコントロールすることが重要である.切開方向は11時から12時の間,出力波形は切開波を選択する.通電は断続的に行い,(1)初期凝固の形成→(2)火花放電による切開→(3)通電の休止による冷却の過程を繰り返す.この断続的切開により,切開波のみでも一定の凝固層を形成しながらの切開が可能となる.ハチマキ襞付近までは膵管口へのダメージの防止を優先し,迅速な切開で凝固層の範囲を最小限にとどめる.ハチマキ襞より口側への切開では径の太い動脈枝の存在する可能性があり,十分な凝固層を形成させつつゆっくりと切開する.切開の過程では「メスが走る」事態に注意する.「メスが走る」事態を避けるためには,ブレードを張りすぎず押しつけ過ぎないことに加え,(1)漏電を回避する,(2)ブレードと組織の接触面積を極力小さくする,(3)「counter traction」の3点に留意し,切開がスムーズに開始されるようにすることが重要である.