著者
佐藤 邦夫 狩野 敦 濱島 ちさと 関 英政 加藤 博巳 田沢 義人 加藤 智恵子 猪股 正秋 佐藤 俊一 武田 豊
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.318-327, 1987-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
66

62歳男性のDouble Pylorus(以下DP)の1例を経験した.患者は心窩部痛を主訴として来院し,X線および内視鏡検査で,幽門の小彎側に十二指腸球部に通じる瘻孔と,これに接して十二指腸潰瘍を有するいわゆるDPが確認された.この患者の10年前の内視鏡所見では幽門前部小彎に変形は認めるものの,副交通路は形成されていない.本邦では近年本症の報告が相次ぎ,1985年末で本例を含め43例にのぼる.その内訳は男32例,女11例で,自覚症状は心窩部痛,吐下血が多い.平均年齢は61.4歳で,成因は先天性2例,後天性33例,いずれとも断定していないもの8例で,副交通路の位置は幽門の小彎側33例,大彎側6例,前壁側1例,部位記載不明3例である.治療法は外科的17例,保存的26例で,最近は保存的に治療されるものが多い.幽門近傍潰瘍の穿通によって形成されるとみられる後天性DPについてはPeripyloric gastroduodenal fistulaと呼ぶのが適切と考えられる.
著者
猪股 正秋 照井 虎彦 遠藤 昌樹 久多良 徳彦 千葉 俊美 折居 正之 鈴木 一幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.1556-1567, 2005

内視鏡的十二指腸乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy;以下EST)において出血を避けるためには,切開方向,高周波の出力波形の問題に加え,切開線周囲の凝固層の範囲をコントロールすることが重要である.切開方向は11時から12時の間,出力波形は切開波を選択する.通電は断続的に行い,(1)初期凝固の形成→(2)火花放電による切開→(3)通電の休止による冷却の過程を繰り返す.この断続的切開により,切開波のみでも一定の凝固層を形成しながらの切開が可能となる.ハチマキ襞付近までは膵管口へのダメージの防止を優先し,迅速な切開で凝固層の範囲を最小限にとどめる.ハチマキ襞より口側への切開では径の太い動脈枝の存在する可能性があり,十分な凝固層を形成させつつゆっくりと切開する.切開の過程では「メスが走る」事態に注意する.「メスが走る」事態を避けるためには,ブレードを張りすぎず押しつけ過ぎないことに加え,(1)漏電を回避する,(2)ブレードと組織の接触面積を極力小さくする,(3)「counter traction」の3点に留意し,切開がスムーズに開始されるようにすることが重要である.
著者
猪股 正秋 照井 虎彦 遠藤 昌樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 = Journal of Japan Biliary Association (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.448-457, 2005-10-31

内視鏡的十二指腸乳頭括約筋切開術(EST)における切開方向は11時から12時の間とする. 出力波形は原則的に切開波を選択する. 通電は断続的に行い, 切開線周囲の凝固層の幅をコントロールしながら切開するイメージを持つ. ハチマキ襞付近までは膵管口へのダメージの防止を優先し, 凝固層の範囲を最小限にとどめる. このためには, 比較的迅速な切開が必要である.ハチマキ襞より口側への切開では径の太い動脈枝の存在する可能性に配慮し, 十分な幅の凝固層を形成させつつゆっくりと切開する.切開の過程で最も注意すべきなのは「メスが走る」事態である.「メスが走る」のを避けるには, いつでも切開線の伸張を止められる態勢を整えておくことに加え, 切開が通電開始後可及的すみやかに始まることが重要である.切開線の伸張をいつでも止められるようにするには, 必要以上のブレードの張りや過度の押しつけは禁忌である.さらに, 連続的な通電・切開は行わないことが大切である.切開が通電開始後すみやかに始まるようにするには, (1)漏電を回避すること, (2)ブレードと組織の接触面積を極力小さくすること, (3)「Counter traction」を意識的に活用することの3点を意識することがポイントとなる.