- 著者
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高森 スミ
久家 智子
辻 明良
- 出版者
- Japanese Society of Environmental Infections
- 雑誌
- 環境感染 (ISSN:09183337)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.2, pp.27-32, 1992-12-15 (Released:2010-07-21)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
-
3
手指消毒剤の評価のうち, 殺菌あるいは抗菌作用についての検討成績は数多く報告されているが, 使用者から手荒れの訴えがあるにもかかわらず, その検討報告は少なく, 対策に有用な成績は得られていない. 消毒剤を常用する医療従事者にとっては, 手荒れが生じにくくかつ除菌, 殺菌効果のすぐれた消毒剤が望まれる. 本研究では健常者を対象に実際の手指消毒法に準じた条件で, 1日8回, 8日間手洗いを行い, その前・後の皮膚状態を観察し, 加えて除菌効果およびパッチテストによる皮膚刺激性について検討した. 用いた消毒剤は4%グルコン酸クロルヘキシジン, 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン, 0.1%塩化ベンゼトニウム, 0.2%塩化ベンザルコニウム・エタノール, 7.5%ポビドンヨードの5剤である.その結果, 使用した消毒剤すべてにおいて手洗い回数が増えるに従い手荒れがみられ, その程度は7.5%ポビドンヨードがもっとも高く, ついで0.1%塩化ベンゼトニウム, 4%グルコン酸クロルヘキシジン, 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン, 0.2%塩化ベンザルコニウム・エタノールの順であった. また皮膚の状態から手荒れは爪周囲に強く認められた. 除菌効果は7.5%ポビドンヨード (平均76.9%) を除く4剤は91%以上と高い除菌率を示した. パッチテストの陽性率は0.2%塩化ベンザルコニウム・エタノールの35.5%がもっとも高く, ついで7.5%ポビドンヨードの15.5%であった.しかし, パッチテストの陽性率と手荒れ度との相関は認められなかった.