著者
山内 勇人 河野 恵 大西 誠
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.81-86, 2006-06-20
参考文献数
7
被引用文献数
5

インフルエンザウィルス感染症は, 病床運営や患者生命にも関わる重篤な院内感染症の一つである. 当院は240床中80%がリウマチ性疾患, 中でも関節リウマチ (RA) が大多数を占めるRAの専門病院である. 2002年度の全国的なインフルエンザの大流行時に, 当院でもインフルエンザ患者が急増した. その主たる原因をエレベーター内での飛沫感染と考え, 入院患者, 職員, 外来患者や面会人を含む病院全体での厳格なサージカルマスク着用による飛沫予防策を緊急導入し, アウトブレークを途絶することに成功した. その経験から, 当院ではワクチン接種の推進に加え, 冬期のサージカルマスク対策を継続して行っている. 更には, 外来有熱患者の受付でのトリアージを2004年度より導入し, 飛沫予防策の強化を図っている. その結果, 入院患者でのインフルエンザ発生は, 2003年度0人, 2004年度は3人と良好な結果である.<BR>当院のようなハイリスク集団におけるインフルエンザの院内感染対策において, ワクチン接種の重要性は言うまでもないが, 病院全体での厳格な飛沫予防策の併用は極めて有用である可能性が示唆された.
著者
片山 由美 月田 早智子 南出 和喜夫 岸下 雅通
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.49-52, 1995

今回, 院内感染と医療従事者の衣類について検討すべく, 京都大学本医療技術短期大学部学生のキャップの汚染状態を調査した. 菌分離は, 病棟実習中の本学短期大学部3回生36名を対象にキャップの7ヵ所をスタンプして行った. 同時に被検者全員の手指からの分離も行った.<BR>菌分離者は36名中75%の27名であり, そのうち1名のキャップから<I>Staphylococcus aureus</I>が分離され, MRSAであった. その他, キャップや手指からの分離菌種は表皮ブドウ球菌, 真菌類, その他の細菌が占めていた.<BR>キャップの使用期間と菌分離の関係は明確には解らなかったが, キャップの汚染源として使用者の手指・病院環境・医療機器などが考えられ, キャップのみならず医療従事者の頭部は汚染されているという認識をあらためて得た.<BR>本調査において, 表皮ブドウ球菌やその他の細菌がその多くを占めていた.さらに表皮ブドウ球菌などのCNSがすでにメチシリンに耐性を持ち, 院内感染の主流になりつつあるという事実を再確認した. 今後, 院内感染起因菌の変遷に伴い, 感染防止行動の基本である手洗いを徹底させるとともに, 医療従事者の衣類に関する感染防止行動指針の確立が必要と思われる.
著者
山本 恭子 桐村 智子 鵜飼 和浩
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.213-219, 2000-08-23 (Released:2010-07-21)
参考文献数
26

強酸性電解水手洗いによる皮膚への影響を角質層表面の細胞変性と経皮水分蒸散量 (TEWL値) より検索し, 除菌効果と合わせて検討した.皮膚への影響について, 角質層表面の細胞変性をみると60秒3回の手洗いで強酸性電解水は水道水, ウェルパス®, ヒビスクラブ®よりも強い変性が認められたがTEWL値に変化はみられなかった.また, 強酸性電解水1回手洗いを15, 30, 60秒間で比較すると細胞変性は15秒間, 30秒間手洗いではいずれも60秒間と比較し軽度であった.しかしTEWL値は15, 30, 60秒間の手洗いでは変化は認められなかった.除菌率は15秒間手洗いで平均66.6%, 30秒間手洗いで89.5%, 60秒間手洗いで91.0%であり, 15秒間手洗いは30秒間, 60秒間手洗い群と比べ劣っていた.さらに, 臨床の場における手洗いを考慮し15秒間および30秒間手洗いを連続20回行うと, 両群とも細胞変性が認められたが, 15秒間手洗い群では48時間後, 30秒間手洗い群では72時間後に元の状態に回復した.TEWL値は30秒間手洗い20回終了直後に増加が認められたが24時間後には元の状態に回復した.以上の結果より, 強酸性電解水手洗いにおいて皮膚への影響を最小限に抑え, しかも除菌効果を得るためには30秒間の手洗いがもっとも適していると考えられた.また, 強酸性電解水手洗を頻回に行う場合には常に手荒れの可能性があり, 手荒れ予防対策を考慮する必要があろう.
著者
太刀川 貴子 渡理 英二 染谷 健二 池田 年純 荒明 美奈子 藤巻 わかえ 金井 孝夫 内山 竹彦 宮永 嘉隆
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.255-263, 1999-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

弱酸性電解水の各種病原微生物に対する効果を検討した.弱酸性電解水は電解添加液 (NaCl, HCl) を微量添加した水道水を隔壁膜のない電気槽で電気分解し, pH5.0-6.0に設定することにより, 次亜塩素酸を効率よく有効利用する目的で開発された.細菌に対する効果は含有塩素濃度, pH, 温度, 作用時間の影響を検討した.無芽胞菌 (13種を検討) においては本電解水含有塩素濃度30ppm, 作用時間30秒で被験菌株のほとんどについて生存菌数が検出限界以下であったが, P. aeruginosaの殺菌には50PPmが必要であった.有芽胞菌 (3種を検討) の場合, C. perfrigensとC. botulinumは含有塩素濃度60ppm, 作用時間1分で検出限界以下になった.B.subtilisは含有塩素濃度50ppm, 作用時間5分で検出限界以下になった.ウイルスに対する効果は50ppmではInfluenzavirus A/PR/8/34株, Semliki forest virusにおいては5秒, Adenovirus8型では15秒, Herpes simplex virus 1型HS株では1分, 2型KP株では5分以内で検出限界以下となった.Humanimmunodeficiency virus1型IIIB株においては30ppm, 5秒で検出限界以下となった.また, 応用として, 手指除菌効果の検討, 噴霧による実験動物飼育室の除菌効果の比較を行ったが, いずれも除菌効果があった.本弱酸性電解水は各種病原微生物に対して優れた殺菌効果があり, 安全で種々の用途への応用が期待される.
著者
白石 正 丘 龍祥 仲川 義人
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.108-112, 1998-04-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
12

注射部位の皮膚消毒には80vol%消毒用エタノール (ETOH), 70vol%イソプロパノール (IPA), 80vol%メタノール変性アルコール (NEO) が使用されている.これらの同等性の如何を検討する目的で, それぞれの試験液 (未希釈液) と1.5倍, 2倍, 3倍希釈液の各種臨床分離株に対する殺菌効果および医療従事者 (n=10) を対象とした皮膚の除菌効果を検討した.その結果, 3種の未希釈液および1.5倍希釈液は各種細菌を15秒で殺菌したが, 2倍希釈液では30秒の接触でETOHに比しIPA, NEOがより高い殺菌効果を示した.皮膚の除菌率ではETOHの未希釈液は99.0±1.3%となり, 2倍希釈液85.0±18.6%および3倍希釈液61.3±30.58%との間に有意差が認められた.NEOにおいても未希釈液98.9±1.6%と2倍希釈液95.2±5.3%および3倍希釈液68.4±35.7%との間で有意差が認められた.しかし, IPAでは未希釈液の除菌率97.7±4.0%と3倍希釈液の除菌率77.3±29.1%の間にのみ有意差が認められた.これらより, 基礎的検討において各消毒剤の未希釈液および1.5倍希釈液は高い殺菌効果を有していたが, 臨床的検討ではIPAがETOHおよびNEOに比し, 高い殺菌効果を示したことから, 総合的に見た殺菌力ではIPA>NEO>ETOHであることが認められた.
著者
白石 正 仲川 義人
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.275-279, 1999-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
7
被引用文献数
4

医療用具の一次消毒には様々な消毒剤が使用されているが, 被消毒物に損傷を与えるような消毒剤の使用は控えるべきである. 今回, 金属の腐食性に着目して鉄片, 亜鉛片, 銅片, アルミニウム片, 真鍮片およびステンレス片を対象に, 浸漬消毒に通常使用されない消毒剤も含めた7種の消毒剤によるこれら金属に対する腐食性, および腐食して錆が発生した鉄片に対する消毒剤の殺菌効果の影響とその原因について検討した. 0.1%塩化ベンザルコニウム液は鉄片に対して30分, 0.02および0.05%次亜塩素酸Na液は鉄片および亜鉛片に対して10分, 銅片に対して1時間の浸漬で錆の発生が認められた. 両性界面活性剤は鉄片に対して0.2%溶液中で1時間後, 0.05%溶液では3時間後に錆の発生が認められた. 0.1および0.5%グルコン酸クロルヘキシジン液, 80vol%エタノールおよび70vol%イソプロパノールは, 少なくとも6時間以内の浸漬では錆の発生は認められなかった. 一方, 鉄錆 (+) 片と鉄錆 (-) 片を対象にグルコン酸クロルヘキシジン液, 塩化ベンザルコニウム液および両性界面活性剤の殺菌効果の相違の有無については, いずれの消毒剤も鉄錆 (+) 片は鉄錆 (-) 片に比べ殺菌効果の低下が認められた. この原因として, 鉄錆 (+) 片から溶出する鉄イオン量が鉄錆 (-) 片に比べ多いことから, 鉄イオンが殺菌効果に影響していことが一因と考えられた.
著者
山内 勇人 河野 恵 大西 誠
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.81-86, 2006-06-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
7
被引用文献数
2

インフルエンザウィルス感染症は, 病床運営や患者生命にも関わる重篤な院内感染症の一つである. 当院は240床中80%がリウマチ性疾患, 中でも関節リウマチ (RA) が大多数を占めるRAの専門病院である. 2002年度の全国的なインフルエンザの大流行時に, 当院でもインフルエンザ患者が急増した. その主たる原因をエレベーター内での飛沫感染と考え, 入院患者, 職員, 外来患者や面会人を含む病院全体での厳格なサージカルマスク着用による飛沫予防策を緊急導入し, アウトブレークを途絶することに成功した. その経験から, 当院ではワクチン接種の推進に加え, 冬期のサージカルマスク対策を継続して行っている. 更には, 外来有熱患者の受付でのトリアージを2004年度より導入し, 飛沫予防策の強化を図っている. その結果, 入院患者でのインフルエンザ発生は, 2003年度0人, 2004年度は3人と良好な結果である.当院のようなハイリスク集団におけるインフルエンザの院内感染対策において, ワクチン接種の重要性は言うまでもないが, 病院全体での厳格な飛沫予防策の併用は極めて有用である可能性が示唆された.
著者
粕田 晴之 福田 博一 池野 重雄 清水 禮壽 林 和
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.103-108, 1997-09-10 (Released:2010-07-21)
参考文献数
26
被引用文献数
3

手術室看護婦と麻酔科医師10人 (看護婦医師群) と臨床実習生10人 (医学生群) について, 擦式アルコール消毒剤 (ウェルパス®3ml;丸石), 電解酸性水 (超酸化水®流水式500ml・1分;シオノギ) あるいは手術用滅菌手洗い水 (流水式5l・1分) を用いた衛生学的手洗いを行い, 寒天培地接触法を用いて除菌効果を比較検討した. 電解酸性水については手洗い時間 (250ml・30秒, 500ml・1分, 750ml・90秒, 1000ml・2分) と除菌効果との関係も検討した.擦式アルコール消毒剤を用いた手洗いによる除菌率は看護婦医師群, 医学生群それぞれ96.4±4.5%, 91.2±9.9%と差がなかったが, 流水式電解酸性水による手洗いではそれぞれ90.5±13.5%, 37.3±69.0%と医学生群で有意に低かった.流水式手術用滅菌手洗水による手洗いでは除菌されず, むしろ菌数の増加がみられた. 電解酸性水による手洗い時間と除菌効果との関係では, 看護婦医師群で手洗い1分から手洗い時間依存性に生菌数の有意な減少が認められたのに対し, 医学生群では30秒で菌数の増加がみられ, 1分30秒後から有意な減少が認められた.擦式アルコール消毒剤による衛生学的手洗いは, 日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群に対しても看護婦医師群同様に有効な除菌法であることが示された.日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群が流水式電解酸性水による手洗いで有効な除菌を得るためには, 看護婦医師群よりも30~60秒長い手洗い時間が必要で, 手洗い対象を考慮した手洗い時間を設定する必要のあることが示された.
著者
加藤 健 兼本 園美 北村 正樹 畠山 まり子 奈良 京子 吉川 晃司 町田 勝彦 小野寺 昭一 吉田 正樹 柴 孝也
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.223-228, 2002-05-24 (Released:2010-07-21)
参考文献数
2

当院には, 感染制御チームをはじめとする感染症に関する様々な部門が組織化されている. 今回は, 院内感染対策の中心的役割を果たしている感染制御チームと事務局である病院管理課の業務を通じて, 院内感染対策における事務部門の役割について検討した. 事務局が, 感染症関連情報を一元管理することにより, 病院全体での感染症対策のレベルアップや管理体制の整備・拡大につながり, 病院管理部門と診療部門の円滑な運営をもたらすことができ, さらに, 臨床現場の意見が反映された改訂版の感染対策ガイドラインが作成されることになった. このような実績をもとに, 病院のクオリティ向上に貢献するとともに, 院内感染対策に対するリスクマネジメント体制が整備されることになった.
著者
山口 利子 武田 千津 中野 静子 北尾 孝司 篠原 信之
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.145-150, 2001-06-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
14

看護婦に対するアンケート調査の結果, 94.4% (167/177) が手荒れを経験し, その悪化対策や予防の目的で71.2% (126/177) がハンドクリーム等を使用していることがわかった.そこで, ハンドクリーム等の使用が手指付着菌の洗浄に対してどのような影響を及ぼすのかを知るために実験を行った.実験は日常的に多く使用されていたザーネクリーム®軟膏 (ZO), プライムローション® (PR) および皮膚保護材のデルマシールド® (DS) の3種類を手指に塗布して行った.塗布後に付着せしめた被験菌の洗浄効果は寒天培地接触法によって測定した.手指の洗浄は, 「無洗浄」「流水洗浄」「こすり洗い」の3通りの方法で行った.その結果, 手指に付着する菌数はハンドクリーム等の塗布の有無にかかわらず差はみられなかった.菌付着手指は「無洗浄」で寒天平板培地にスタンプを繰り返したところ, ZO, PR, DSを塗布したいずれの場合においても, スタンプを9回繰り返しても付着菌が検出された.また, 「流水洗浄」の場合は付着菌の減少はみられたが, 完全には除去されなかった.さらに「こすり洗い」では, 被験菌が大腸菌の場合には, PR, DSでは1回の洗浄で, ZOでは2回の洗浄で除去された.しかし, 被験菌が黄色ブドウ球菌の場合には, 洗浄を9回繰り返しても, PR, DS, OZ塗布のいずれにおいても付着菌が確認された.ハンドクリーム等塗布の手指に付着した菌は, 塗布しなかった手指に比べて除去されにくかった.
著者
山本 恭子 鵜飼 和浩 高橋 泰子
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.329-334, 2002-11-26
参考文献数
23
被引用文献数
8

本研究は非薬用固形石鹸と流水による手洗いを, 石鹸を泡立て擦り合わせる行為, 流水にてすすぐ行為, ペーパータオルで拭く行為の3段階に分け, それぞれの段階における手指の細菌数の変化を明らかにし, 有効な手洗い方法に関して検討を加えた. 石鹸を泡立て擦り合わせることによる手掌部の細菌数を経時的に測定した結果, 泡立て時間が長いほど細菌数は多くなった. 次に, 15秒間石鹸を泡立てた後流水ですすぎ, 手掌部, 指部, 指先の細菌数を経時的に測定した結果, 3部位ともすすぎに伴い細菌数は減少した. しかし, 手洗い前と比較して, 手掌部では120秒間, 指部では60秒間のすすぎで細菌数は有意に減少したが, 指先では120秒間すすいだ後も細菌数が有意に多かった. また, すすぐ過程で指先を他方の手掌部に擦り合わせることを試みたが, 除菌効果に改善は認められなかった. 最後に15秒間石鹸を泡立て15秒間すすいだ後ペーパータオルで手を拭くことによる除菌効果を調べた. 手掌部, 指部では手拭きの前後で細菌数の有意な減少は認められなかったが, 指先では手拭きによる有意な細菌数の減少が認められた. 以上の結果から, 手洗いで除菌効果を得るためには, 石鹸泡立て時間が長いほど充分なすすぎを行う必要がある. さらにすすぎにより指先は手掌部および指部と比べて除菌されにくく, すすぎ後にペーパータオルで拭くことが除菌に有効であると考えられた.
著者
茅野 崇 鈴木 理恵 新谷 良澄 吉田 敦 奥住 捷子 森屋 恭爾 木村 哲
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.81-84, 2005-06-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
19

病院感染対策には手洗いおよび手指消毒が基本かつ重要である. 近年のアルコールゲル擦式手指消毒薬 (ゲル剤) に関する報告ではKramerらがその殺菌効果の低さを指摘している. 我々はKramerらの報告と異なるグローブジュース法によりゲル剤の殺菌効果を検討した.総付着菌数の対数減少値は, 液体石けん0.99±0.53 (n=29), ゲル剤A1. 61±0.66 (n=36), ゲル剤B1.52±0.55 (n=29), アルコール擦式手指消毒薬 (ラビング剤) 2.05±0.67 (n=38) であった (Mean±SD). ラビング剤およびゲル剤は液体石けんに比べ有意に菌数を減少させた (P<0.0001). この結果は, Staphylococcus aureusおよびEscherichia coliの菌種別および被験者を医療職・事務職に分けた職種別の各検討結果においても同様の成績が認められた.以上より, ゲル剤の殺菌効果はラビング剤よりも若干劣り, 石けんと流水による手洗いよりも優れていることが示された.
著者
山本 恭子 鵜飼 和浩 高橋 泰子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.329-334, 2002-11-26 (Released:2010-07-21)
参考文献数
23
被引用文献数
5

本研究は非薬用固形石鹸と流水による手洗いを, 石鹸を泡立て擦り合わせる行為, 流水にてすすぐ行為, ペーパータオルで拭く行為の3段階に分け, それぞれの段階における手指の細菌数の変化を明らかにし, 有効な手洗い方法に関して検討を加えた. 石鹸を泡立て擦り合わせることによる手掌部の細菌数を経時的に測定した結果, 泡立て時間が長いほど細菌数は多くなった. 次に, 15秒間石鹸を泡立てた後流水ですすぎ, 手掌部, 指部, 指先の細菌数を経時的に測定した結果, 3部位ともすすぎに伴い細菌数は減少した. しかし, 手洗い前と比較して, 手掌部では120秒間, 指部では60秒間のすすぎで細菌数は有意に減少したが, 指先では120秒間すすいだ後も細菌数が有意に多かった. また, すすぐ過程で指先を他方の手掌部に擦り合わせることを試みたが, 除菌効果に改善は認められなかった. 最後に15秒間石鹸を泡立て15秒間すすいだ後ペーパータオルで手を拭くことによる除菌効果を調べた. 手掌部, 指部では手拭きの前後で細菌数の有意な減少は認められなかったが, 指先では手拭きによる有意な細菌数の減少が認められた. 以上の結果から, 手洗いで除菌効果を得るためには, 石鹸泡立て時間が長いほど充分なすすぎを行う必要がある. さらにすすぎにより指先は手掌部および指部と比べて除菌されにくく, すすぎ後にペーパータオルで拭くことが除菌に有効であると考えられた.
著者
松野 容子 水野 秀一 大徳 優子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.123-127, 1996-09-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
6

病院環境における菌の分布やその動態の一端を明らかにする目的で, 病棟エレベーターの押しボタンと手指を対象とする細菌学的検討を行った.使用人数別 (1~8人) および経時間的 (30~120分) に押しボタン上から検出された菌数は, おおむね0から最高150~300colony forming units (CFU) で, そのうちの70%以上が20 CFU未満であった.しかし, 時に1200CFUもの菌が検出されるなど, 一部のヒトの手指の汚染状況に応じて接触後に非常に汚染された状態が生じうることが明らかとなった.無作為な押しボタンの拭き取り調査では最高検出菌数は約300CFUであったが, 平均検出菌数は約100CFUと高く, その一因として皮脂による菌の付着効果が考えられた.また, 押しボタンから手指に付着したcoagulase negative staphylococci (CNS) の経時的なプラスミドプロファイルからは複数の異なる菌株が確認され, 手指を介して菌が刻々と伝播されていく実態が推察された.
著者
小花 光夫
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Supplement, pp.37-41, 2000-05-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
8

病院内では数多くの微生物が病院感染を惹起する可能性を有しているが, 現在のところ腸内細菌群を中心としたグラム陰性桿菌の中ではMRSAや緑膿菌ほどに問題化している菌種はみられない. しかし, セラチア・マルセッセンス (Serratia maroesoens) などの一部の菌種は弱毒菌であっても汎用消毒薬に抵抗性を有していること, また, 本菌群のかなり多くのものがβ-ラクタム系薬剤を初めとした多種の抗菌薬に対して耐性を有していることなどから, 従来から本菌群は病院感染起炎菌として注目されていた. このことは, 新規のβ-ラクタム系 (特に, 第3世代セフェム系) 薬剤の開発が一時期本菌群に対して向けられていたことからも裏付けられ, その結果として, 本菌群の病院感染起炎菌としての重要性は一時的にはやや減少をみた. しかし, 近年, 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌やメタローβ-ラクタマーゼ産生菌などのような新たな耐性菌が出現してきたことから, 本菌群の病院感染起炎菌としての重要性は再び増加しつつあり, しかも今後益々助長されるものと考えられ, 本菌群の動向には今後とも十分な監視と対応が必要といえる. 本稿では, 大腸菌 (Escherichia coli), サルモネラ (Salmonella spp.), クレブシェラ・ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae), エンテロバクター (Enterobaoter spp.), セラチア・マルセッセンス (Serratia marcescens) などについて病院感染起炎菌という観点から感染経路や病原性などについて述べた.
著者
大野 聖子 佐藤 敬子 片岡 恵子 田中 結美 小原 優子 野田 あゆみ 小島 広美 細見 博子
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.264-268, 2000-08-23
参考文献数
8
被引用文献数
2

1995年と96年の公務災害に申請された針刺し・切創事故をEPINet日本語版を用いて解析を行った.それに基づき携帯型針捨て容器の導入, 病棟で使用する滅菌処置セットに滅菌済みの膿盆を組み込むこと, ゴム栓よりの真空採血用にルアーアダプターを採用などの改善を行った.原因器材としてディスポの注射器針, 翼状針, 留置針, 真空採血針の全体に占める割合は2年平均14件全体の65%から6件30%に減少した.携帯型針捨て容器はコスト的にも100床あたり月5000円程度で一般病院でもまず試みうる対策と考えた.
著者
岩沢 篤郎 中村 良子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.179-183, 2001-06-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
9

10%ポビドンヨード製剤中の添加物の違いによる殺菌効果・細胞毒性の差を検討した.その結果, 殺菌効果は製剤間の違いは認められなかったが, 細胞毒性に大きな違いが認められた.この毒性は, グリセリン, ポリビニルピロリドンでは認められなかったことから, 添加界面活性剤の違いと考えられた.ポビドンヨード原末の毒性は低いものの, 創傷部等に頻回に使用する際には, 添加物の毒性にも注意が必要と考えられた.
著者
志田 泰世 野口 久美子 金子 潤子 金沢 宏 吉川 博子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.184-187, 2005
被引用文献数
2

平成15年12月30日, 新潟市民病院の神経内科と整形外科の混合病棟の入院患者47名中13名に下痢, 嘔吐の症状が出現した. 準夜勤務者 (3名) にも同様の症状が認められた. 病棟発生調査とおよび脱水症状の患者への治療が開始された. 出勤していないスタッフにも同様の症状が多いことがわかった. 緊急対策会議を開催し, 患者隔離・スタンダードプリコーションの徹底及び厳重な接触感染予防策が実施された. 胃腸炎の原因はノロウイルスであることが判明した. 1月8日には有症状患者は0となり, 10日患者の隔離解除・平常業務体制となった. ノロウイルス感染の症状は, 嘔吐69%, 下痢66%といわれ, 成人では下痢, 小児では嘔吐が多いとされている. そのため, ノロウイルスの主要感染ルートは, 糞口感染で, 高齢者ではおむつ交換時, 汚染された水や貝 (二枚貝) で, 時に飛沫による感染が推定されることから, 注意が必要である.
著者
白石 正 仲川 義人
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.165-169, 2007-09-25 (Released:2010-07-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

輸液内への細菌混入は, 薬剤混合時やライン交換時などで生じ, カテーテル関連血流感染の原因 となることが知られている. そこで, 輸液中に細菌が混入した場合の細菌の増殖動向を検討した. 輸液は電解質輸液2種類, アミノ酸輸液3種類, 脂肪乳剤配合アミノ酸輸液1種類および50%ブドウ糖液1種類の合計7種類を使用した. 被験菌はE. coil, S. marcescens, P. aeruginosa, S. aureus, およびS. epidermidisを使用し, これらの細菌を一定菌量に調整した菌液をそれぞれ各輸 液に添加し, 6, 12, 24時間後にサンプリングを行い, SCD寒天培地に接種し, 35℃24時間培養 後コロニー数を計測した. この結果, 脂肪乳剤配合アミノ酸輸液中では, いずれの被験菌も経時的に増殖が認められたが, 50%ブドウ糖液中では6時間以降, 増殖は認められず, pHおよび浸透圧が関与しているものと考えられた. その他の輸液中では, 菌種により異なりP. aeyuginosa, S. auyeus, およびS. epidermidisでは48時間後に増殖は認められず, E. coil, S. marcescensでは増殖が認められた. このことから, 輸液の組成, pH, 浸透圧に加え, 細菌種の性質も関与すると考えられた.