著者
久我 堯
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.733-742, 1971-04-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
25

研究目的Reger and Lierle (1954) が刺激音及び検査音が1000Hz純音において音圧20db (SL) 及び80db (SL) で60秒間刺激した場合, 刺激音圧20db (SL) のTTSが80db (SL) のそれよりも大きいという事実を発表し, このことに関しては耳小骨筋の反射性収縮がある程度関与しているのではなかろうかといわれてきた. そこで音刺激に対する耳小骨筋反射収縮とTTSとの関係をさらに検討するために本実験を試みた.実験方法2台の特別に工夫をこらされたBékésy type audiometersを使用し, 刺激音及び検査音を1000Hzとして刺激音圧20db~80db (SL) で刺激時間が10秒~60秒にてTTSを次の対象群について測定した.1) 正常者群2) 耳介筋を随意的に収縮しうる群3) 顔面神経麻痺患者群実験結果1) 音圧20db (SL) ~80db (SL) の比較的弱ないし中等度刺激を10秒~60秒間作用させた場合, TTSの大きさは刺激音圧とは逆比例的に減少する傾向を示した.2) Regerのいう一見奇異な現象は, 刺激時間20秒附近より現われ初め, 60秒において著明であった.3) 刺激音圧20db (SL) の場合, 耳介筋収縮時のTTSは, 非収縮時のそれよりも小さい.4) 顔面神経麻痺患者症例においては, 刺激音圧80db (SL) のTTSの大きさは正常耳のそれよりも大きい.5) アブミ骨筋の音響性反射収縮は, 聴覚疲労に対して防禦的作用を呈する.