著者
宮本 健司 増澤 俊幸 久手堅 みどり
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.221-226, 2000
被引用文献数
2 6

北海道でアカハラとアオジがライム病の病原体保有動物としての役割を演じていることを報告したのに引き続き, 1993-1999年に同様に野鳥30種を調べ3属5種のマダニ(Ixodes persulcatus, I. turdus, Haemaphysalis flava, H. longicornis, Amblyomma testudinarium)を採集した。これらのうち神奈川と大阪産シジュウカラと京都産クロジからのアカコッコマダニおよび盛岡産カシラダカとアオジからのシュルツェマダニからボレリアを検出した。これらのうち1999年度のカシラダカ1個体からの3幼虫より分離した2株とアオジ1個体からの18幼虫よりの15株を精査した結果, いずれもユーラシア型またはアジア型のBorrelia gariniiであった。カシラダカがライム病に関与していることは新記録である。これら分離株はダニ幼虫が鳥類から直接病原体を受け取ったことを示唆するもので, 流行地で感染した野鳥類が本州の東北部で確実に病原体を拡散していることが推測された。