著者
橋本 喜夫 宮本 健司 飯塚 一
雑誌
皮膚病診療 (ISSN:03877531)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.926-929, 2003-08

雑誌掲載版北海道における6年間のマダニ刺咬症例700例を集積し,ライム病ボレリアの保有率とマダニ刺咬症のライム病発症の頻度を検討した.気候の温かい年度は発症例が若干多く,また年次ごとに症例件数は増加傾向にあった.男女差はなく,9歳以下の小児と40〜60歳代に好発していた.罹患部位は頭頸部,躯幹がそれぞれ約1/3を占めた.小児では約4/5が頭頸部を刺されていた.月別では5,6,7月に集中し,特に6月の発生は約45%を占めた.同定可能であった366例中,303例がシェルツェマダニで,63例がヤマトマダニであった.ヤマトマダニによるライム病確実例の報告は未だなく,人口に比べてライム病の報告の少ない函館市は,ヤマトマダニの優占地域であることがその一因と考えられた.522例に皮膚培養を施行し,43例がボレリア陽性であった.ライム病発症は56例8%であった.マダニ自己抜去群330例と,医療機関を受診した370例を比較すると,ライム病発症率は前者が16.1%,後者が0.81%で,直ちに専門医を受診することの重要性が示唆された
著者
宮本 健司 境野 環樹
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.265-267, 1997
被引用文献数
3

1996年7月旭川市内の医療施設で入居者2名に皮疹が生じた。精査の結果, 部屋に設置された換気扇フードに営巣したハクセキレイからのトリサシダニ(Ornithonyssus sylvarium)の刺咬が原因であった。
著者
宮本 健司 中尾 稔
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.267-269, 1991
被引用文献数
5 6

1980年から10年間にダニ標本を確認した58例の人体マダニ咬症を分析した。これらの発生は5月(18例), 6月(29例), 7月(9例)および9月(2例)で前3カ月に集中する。9月にシュルツェマダニ雄成虫寄生例を認め, この雄ダニを解剖したところ, 少量の血液を腸管に含有していた。いっぽう, 旭川と富良野で野外のマダニ類の活動状況をハタズリ法で調べた。両地点とも4月中旬から活動が開始され, そのピークは5,6,7月に活発となり, 人体マダニ咬症発生の時期に一致した。
著者
宮本 健司 増澤 俊幸 久手堅 みどり
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.221-226, 2000
被引用文献数
2 6

北海道でアカハラとアオジがライム病の病原体保有動物としての役割を演じていることを報告したのに引き続き, 1993-1999年に同様に野鳥30種を調べ3属5種のマダニ(Ixodes persulcatus, I. turdus, Haemaphysalis flava, H. longicornis, Amblyomma testudinarium)を採集した。これらのうち神奈川と大阪産シジュウカラと京都産クロジからのアカコッコマダニおよび盛岡産カシラダカとアオジからのシュルツェマダニからボレリアを検出した。これらのうち1999年度のカシラダカ1個体からの3幼虫より分離した2株とアオジ1個体からの18幼虫よりの15株を精査した結果, いずれもユーラシア型またはアジア型のBorrelia gariniiであった。カシラダカがライム病に関与していることは新記録である。これら分離株はダニ幼虫が鳥類から直接病原体を受け取ったことを示唆するもので, 流行地で感染した野鳥類が本州の東北部で確実に病原体を拡散していることが推測された。