著者
久松 千恵子 西島 栄治 前田 貢作
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1061-1066, 2016-08-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
10

症例は6 歳女児.3 歳時に黄疸の精査で遺伝性球状赤血球症(HS)と診断された.4 歳時より半年に1 回位の頻度で右上腹部痛があり,腹部超音波検査では胆泥が確認されていた.6 歳時に腹痛が頻回となり,黄疸の増強と画像検査にて脾腫と総胆管内の胆泥貯留を認め,当院に紹介入院となった.内視鏡的経鼻胆道ドレナージ・乳頭括約筋切開術により胆泥はドレナージされたものの黄疸は持続した.その後,腹腔鏡下脾臓・胆囊摘出術を施行.術後腹腔内出血を生じ,経カテーテル的動脈塞栓術を行ったが完全な止血は得られず,開腹止血術を行った.その際血液凝固能の著明な低下を認めた.止血術後,黄疸は漸減したが遷延した.精査にてビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)の遺伝子変異を認め,体質性黄疸の合併と診断した.HS で幼少期に胆泥・胆石や遷延性黄疸を生じる症例では,体質性黄疸を合併している可能性があると考えられた.