著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

TRAILは、細胞膜上に発現するデスレセプター(DR)に結合し、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導する。本研究では、Ir錯体にDR結合性ペプチドを導入した化合物を設計・合成し、がん細胞に対する細胞死誘導活性評価とイメージングを行った。その結果、Jurkat細胞を用いた染色実験で、DR5結合性ペプチドを導入したIr錯体由来の緑色発光が、DR5を発現する細胞膜上で観察された。さらに、フローサイトメーターを用いて、Jurkat細胞、Molt-4細胞、K562細胞に対するIr錯体の結合量を評価した結果、DR5発現量と相関性が示唆された。現在、細胞死誘導活性の向上を指向し、化合物の最適化を検討している。
著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

デスリガンドの一種であるTRAILとデスレセプターを介するシグナル伝達は、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導するため、副作用の少ない抗がん剤開発のための標的経路として注目されている。本研究は、生体内に存在する亜鉛イオンもしくは鉄イオンを用いて、Zn^<2+>(bpy)_3もしくは、Fe^<2+>(bpy)_3錯生成に基づくC_3-対称性の自己集積型TRAIL様人工デスリガンドの創製を目的として取り組んだ。採用1年目である本年度、C_3-対称性構造を有する自己集積型TRAIL様人工デスリガンドを開発するための配位子の選定を行い、1,10-フェナントロリン配位子に対してデスレセプターとの相互作用部位であるPatchA、PatchBペプチドを導入したリガンドの合成を行った。今後、合成した人工デスリガンドの精製およびTRAIL様活性評価と課題は残っているものの、一定の進展はあったと判断する。さらに、C_3-対称性構造に固定化されたトリスシクロメタレート型イリジウム錯体に関して、種々の誘導体化を行い、特徴的な発光特性を有する新規イリジウム錯体を見出した。この知見に基づき、イリジウム錯体にPatchAペプチドを導入したリガンドを合成し、現在、TRAIL感受性細胞を用いた活性評価に取り組んでいる。ドイツでの半年間の留学では、人工トランスフェクション試薬および4点型双生イオン部位を導入した自己集積型分子の創製研究に取り組んだ。特に後者では、高極性溶媒中で外的な刺激に応答可能な超分子ポリマーの生成に関して有用な知見を得た。