- 著者
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久田 善純
水谷 和人
- 出版者
- 岐阜県森林研究所
- 雑誌
- 岐阜県森林研究所研究報告 (ISSN:1882840X)
- 巻号頁・発行日
- no.40, pp.31-36, 2011-03
岐阜県の東濃地域では「栗きんとん」など,粟の果実を原料とした菓子製造業が盛んである。その製造時には,菓子の原料を得るために,東の果実から可食部を取り出す工程がある。栗の果実は, 堅い皮と渋皮でできた果皮の部分と,その内部にある穂子の部分で構成されている。果実の可食部とは, 種子中の肥大した子葉(以下「栗果肉」という)である(岩瀬・大野,2004)。菓子の原料には,栗果肉を押しつぶして餡状態になったものを利用することが多いため, その採取時には,蒸した果実を半分に切断して鋼製ローラー等に投入し,栗果肉だけを圧搾する方法がとられている。その際,残渣として,果皮の部分と搾り取れなかった栗果肉との混合物(以下「粟殻」という)が排出される。栗殻は,9月から11月の間に,同地域内で約500トン排出されており,その大半が廃棄されている。同地域では,資源の循環利用の推進等を目的に,栗殻を有効利用する方法を模索している。現在, キノコの菌床栽培では,菌床の材料として,食品を加工する際の副産物が多く用いられている(寺嶋,2010)。そこで本研究では,粟殻の用途開発の一手法として,キノコ菌床栽培の材料とする可能性を探るため,シイタケ(Lentinula edodes)菌床の基材として利用した場合の子実体発生等への影響を調査した。