著者
久留 景吾 恩田 裕一 河守 歩 加藤 弘亮
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.267-274, 2013-10-01 (Released:2013-11-13)
参考文献数
13
被引用文献数
9 23

福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が降下した福島県内の林相の異なる森林3地点を対象に, 樹冠から林床へ降下するリターを通じた放射性セシウムの移行の特徴を明らかにした。事故後4カ月目から11カ月間, 定期的にリターの134Csおよび137Csの放射能濃度を測定し, 降下量の解析を行った。リターの放射能濃度は総じて落葉広葉樹-アカマツ混交林よりもスギ人工林で高い値を示したのは, 事故発生時に広葉樹が落葉していたために, 飛散した放射性セシウムの多くが広葉樹の樹冠を通過して林床へ降下した結果と考えられる。一方, スギ人工林ではリターに伴う放射性セシウム降下量の累積値が大きく上昇し続けており, 調査終了時でも樹冠に放射性セシウムが相当量残存していることが確認された。2011年10月以降各林分でのリターの放射能濃度が概ね横ばいに推移する中, 放射性セシウム降下量は樹冠からのリター降下量に大きく影響されていることが明らかとなった。今後は降下するリターに加え, 樹冠における生葉の鉛直分布や林床でのリターの平面分布, 林内雨や樹幹流などを含めて総合的に放射性セシウムの移行機構を解明していく必要がある。