著者
久芳 忠俊
出版者
教育心理学研究
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.37-43,55, 1969

一般に気質とは内在的な生来性素質に関する名称であつて性格とは生来性の要素と環境との輻輳によつて獲得されたものとの結合組織化されたものであると言われている。然し吾々が日常観察する児童生徒は, どこまでが気質で, どこまでが性格だと峻別することは甚だ困難である。従つて一括して気質性格として取扱うことが妥当である。若しそのように考えないとしたならば性格陶冶とか性格教育と言われているものを否認することになる。それであるから気質性格は内在的な要因の発達や外力によつて変化するものであると言う立場から意志気質検査を 10才から14才に至る5力年間実施してその結果を要因の上から吟味したのである。<BR>(1) 要因の上から概括的に言うならば年少時では思慮を現わす要因が支配的であるのに対して運動の速度, 決断速度の要因は比較的消極的である。12才~19才頃ではどのような要因が気質性格において支配的であるかは容易に捉えることができない。従つてそれ以後の年令になつて始めて明確なものとなつてくると考えられる。<BR>(12) 類型上からは, 同一型を終始維持している場合は極めて僅少で, このTable8を算出する前に検査の各項目について整理を行つて変動を見たのであるが一定の型に嵌つたような場合は大して見られなかつたが然し低学年では比較的運動速度能力を現わす項目において変動の幅が広く, 精密細心を現わす場合が幅が小さい傾向がうかがわれ, その他拡張, 自信等では幅広い変化が見られた。また男女差を見たのであるが殆んど一致して特に著しく目立つた場合は発見されなかつた。総体的には (±0~±3) の範囲の変動が最も多く全体の75%を示している。そして (±4) の範囲より急に減少している。してみると気質性格は例え変化するとしても逐年的には幅の狭い範囲で変化するもののようである。V要約一般に気質とは内在的な生来性素質に関する名称であつて性格とは生来性の要素と環境との輻輳によつて獲得されたものとの結合組織化されたものであると言われている。然し吾々が日常観察する児童生徒は, どこまでが気質で, どこまでが性格だと峻別することは甚だ困難である。従つて一括して気質性格として取扱うことが妥当その他は各人各様で複雑である。<BR>(3)段階点の変動は (±0~±3) の範囲の場合が多数で, 従つて気質性格は狭い範囲で変化するのであつて, その小範囲の変化の累積によつて人格の或る一部を形成するものであると思われる。