著者
久野 春子 横山 仁
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.530-541, 2003-05-31
被引用文献数
1 1

大気汚染物質の光化学オキシダントが,24樹種の各個葉の純光合成速度,蒸散速度および気孔コンダクタンスに与える影響を調べて,都市近郊の大気環境下における樹木の生理的特性をみた。1989年4月から10月初旬まで,東京都立川市内に設置された浄化空気室(FAC区)と非浄化空気室(n-FAC区)内で,落葉広葉樹12種,落葉針葉樹1種および常緑広葉樹H種を1/2,000aワグネルポットで育成した。清浄な空気のFAC区において,純光合成速度,蒸散速度および気孔コンダクタンスが高い値を示していた落葉樹は,n-FAC区で大気汚染物質の影響を受け,特に純光合成速度が著しく低下した。対照的に多くの常緑広葉樹は,FAC区において純光合成速度,蒸散速度および気孔コンダクタンスの値が低く,n-FAC区で大気汚染物質による影響はあまりみられない傾向があった。オキシダントによる純光合成速度の低下率を基準にして,大気汚染耐性の強弱をみると,落葉樹のトウカエデ,イチョウおよび常緑樹のサカキ,ヤマモモ,マテバシイは耐性の強い種とみなされた。一方,長期間大気汚染に曝されても,蒸散速度と気孔コンダクタンスが他の樹種よりも高い値を示した落葉広葉樹のポプラ,エゴノキ,ムクノキ,ケヤキ,ハナミズキ,ヤシャブシ,ガマズミ,ミズキそして常緑広葉樹のサンゴジュとシャリンバイは大気汚染物質を吸着する能力が比較的高い樹種であると推定された。
著者
新井 一司 久野 春子 鈴木 創 遠竹 行俊 大喜多 敏一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.184-191, 2002-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21

モミの衰退木の調査方法を確立し, 東京におけるモミの衰退分布を明らかにするために, 1992年から1993年にかけて山間部を対象に衰退度の評価を107地点, 618個体について行った。調査方法は, 小枝の枯損, 枝葉の密度, 樹形と樹勢の4項目の値を合計した衰退度合計指数が評価基準として有効であった。小枝の枯損と枝葉の密度における衰退度階級2以上の明らかな衰退がみられた個体の割合は, 各々45.2%, 45.6%であった。モミの衰退は, 地形的要因である傾斜や起伏の状態とは関係がみられなかった。一方, 広域的な広がりである緯度, 経度との間には相関関係がみられ, 山間部の南東の地域ほど, 衰退が激しく, 北西部で衰退の程度が弱まる傾向がみられたが, 北西部の一部の谷地形では, 被害がみられた。海抜高は, 250m以下の低い地域ほど衰退が激しく, 高い高度で健全な傾向を示すものの, 750m以上という高い地域でも57.9%の地点に弱いながらも衰退現象がみられた。