著者
小杉 幸夫 亀山 啓輔 宇都 有昭 小阪 尚子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

防災・農林業・医療などで用いられる画像処理の自動化を目指し、画像の撮影状況によって与えられるアプリオリ情報を有効利用する処理の枠組みについて研究を進めた。特に、高解像度画像やハイパースペクトル画像の処理については、適度に自由度を制限したモデルの導入により観測対象の情報を的確に得る枠組みを構成した。主な成果を以下列挙する。被害域の推定:本例では、発災前に撮影された衛星画像をアプリオリ情報として扱い、発災後に撮影された画像を「一致強化」の原理による非線形写像アルゴリズムの中で比較し、被害家屋の分布等の変化域抽出を行った。本方式は2003年12月に発生したイラン南東部地震に伴うBam市の被災例に適用され、処理結果は我国の現地調査団にも提供され、検出結果の妥当性が現地調査で検証された。農作物の糖度推定:農作物の風味は含まれる蛋白量や糖度、アミノ酸等の割合に依存する。収穫後の分析より得られるこれらの量を、収穫前の作物のハイパースペクトル画像から推定することを試みた。この推定系では、ハイパースペクトル画像の多数の波長間の演算をニューラルネットワークとPSO(particle swarm optimization)法を組み合わせた方法で最適化した。この推定では収穫後の分析値を教師データとして用いている。人肌抽出指標の導出:短波長赤外域のハイパースペクトル画像から水面下や土砂上に横たわるヒトを効果的に検出する際のアプリオリ情報活用法について解析を行い、ヒトの皮膚の持つ特異的なスペクトル情報を活用することで肌を顕在化させる正規化指標NHI(normalized human index)を見出した。周期植生の独立成分分析:高高度ハイパースペクトル画像観測の際に発生する混合ピクセル問題を解決する一方法として、少数のパラメータを含む混合ピクセルモデルを導入し、超解像観測で発生する混合ピクセルを一定の条件のもとで個々のピクセル情報に分離する方式を提案した。