著者
内山 真由美 亀山 嘉大
出版者
公益財団法人 アジア成長研究所
雑誌
東アジアへの視点 (ISSN:1348091X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.46-63, 2023 (Released:2023-07-28)
参考文献数
87

本稿では,株式会社スターフライヤーが実施しているペット同伴搭乗サービスを題材に, ペットを含む動物に関する法の先行研究および海外の航空会社のペット同伴搭乗サービスの 現状を整理し,国際線におけるペット同伴搭乗サービスの導入の可能性を検討した。具体的 には,2023 年1~2 月に実施したスターフライヤー台湾チャーター便のインバウンド旅行者 に対するアンケート調査をもとに,仮想市場評価法(CVM:Contingent Valuation Method) に基づくペット同伴搭乗サービスの評価額を計測した。その結果,アンケート調査の回答者 は,韓国のフルサービスキャリアの航空会社が実施しているペット同伴搭乗サービスの料金 と同等の評価を付けることがわかった。 今後のインバウンド戦略では,量よりも質を追求していく必要がある。そのため,観光事 業における新しい付加価値の創出や提供は不可欠なものとなる。ペット同伴搭乗サービスは, その一助になる可能性がある。ただし,ペット同伴搭乗サービスを導入するにあたり,日本 と対象国の双方において人獣共通感染症対策が十分にとられていることが前提となる。その ためには,福岡県が推進する「ワンヘルス」のさらなる進展が求められる。
著者
亀山 嘉大 侯 鵬娜
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.191-209, 2016-09-30 (Released:2017-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本稿は,中四国・九州地域の地方公共団体( 16県5政令指定都市) の調査をもとに,地方公共団体の情報発信を端緒としたシティプロモーションがインバウンドとどのような関係にあるのかを探り,その意義を地域の視点から議論したものである.     観光の情報発信は,シティプロモーションという(地域にとって) 公共財・サービスになるので,市場の失敗による過小供給の抑制のために,地方公共団体が役割を担うことは合理的である.また,観光の情報発信は,旅行者の購買プロセスと関連付けて理解できる.     これらをもとに,地方公共団体の情報発信を端緒としたシティプロモーションをPhase a) 発地における交流や経験を介した着地側の情報発信,Phase b) インターネット媒体を介した着地側の情報発信,Phase c) 着地における交流や経験を介した着地側の情報発信,Phase d) 従来型の国際交流事業に基づく着地側の情報発信の4局面に分類した上で,SWOT分析によって調査結果を整理した.地方公共団体の施策は,Phase a) やPhase d) で違いがあり,SWOT分析の内部環境の強みであるPhase a) で海外事務所を展開したり,職員を海外の地方政府へ派遣したりし,さらに,SWOT分析の外部環境の機会であるPhase d) で20~30年に及ぶ国際交流を展開している.地方公共団体の情報発信を端緒としたシティプロモーションは,旅行先の魅力を高め,旅行先の言語の障壁や安全安心といった心理的な障壁を低減(軽減) し,サーチコストをともなう旅行者の手間隙の軽減を通じて,輸送費を低減させ,インバウンドの誘致に影響を与えているものと考えられる.