著者
遠藤 聡志 山田 孝治 亀島 力
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. 数理モデル化と応用 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.110-118, 2004-02-15
参考文献数
15
被引用文献数
2

セルオートマトン(Cellular Automata : CA)を用いて複雑系現象を再現する場合,状態遷移則(CAルール)を解析対象に応じて適切に設計しなければならない.CAルール設計のテスト問題として,1次元CA密度分類タスクがある.このタスクは局所情報から大域的目的現象を再現しなければならないというCAルール設計特有の困難さがある.Juilleらの示した共進化モデルは,GAの解探索に加えて,解集団の効率的な進化を促す問題空間の探索を利用することで探索性能の改善を図り,当タスクのベストレコードを示すルールの自動設計に成功している.本研究では,CAルール群中の類似性を解集団(CAルール群)から抽出し,それらを「種」という形で具体化したうえで,すべての「種」を包含するような解を求める.この遺伝的操作は,現象内に内包される局所的規則性(サブタスク)を基にして,サブタスク解間のCAルール内での整合性を高めるものである.Juilleらの手法が問題依存型のクラスタリングとheuristicな適応度計算式の拡張を導人したのに対し,提案手法はモデル化する現象に応じたクラスタリングと,種統合のための適応度計算式の自動的な調整を行う点が特色である.