著者
水崎 純一郎 河村 憲一 二唐 裕
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は微重量熱天秤による酸化物試料中の酸素濃度測定装置の整備を行い,酸素に微量の一酸化炭素(あるいは酸化窒素)を含む非平衡混合ガスが触媒(コバルト系,鉄系,銅系のペロブスカイト型酸化物など)の表面に接したとき,そこで起こる一酸化炭素や酸化窒素の酸化還元反応に伴い触媒酸化物中の酸素濃度がどの様に変化するかを測定することを目標とした.然るに,初年度前半に代表者が横浜国大から現職場に移動し,当初計画で既存設備としていた装置が利用できなくなり,特に,熱天秤系とその周辺機器の全てを新規購入作製が必要となったため,研究の進め方は当初計画と可成り異なるものとなった.即ち,熱天秤系の作製と平行して,代表者の元所属した横浜国大の研究室との共同で導電率の変化から固体内の不定比的な酸素濃度変化を考察する手法を検討した.この研究は酸素に微量の酸化窒素を含む場合を中心に進められ,銅系,鉄系,チタン系のペロブスカイト型酸化物において,微量の二酸化窒素分圧の変化によって雰囲気酸素分圧が実効的に数桁上昇したことに相当する導電率変化が認められた.この変化は緻密体・単結晶の方が他孔体より顕著であり固体内不定比酸素濃度が平衡論から予想される値より大幅に酸化側に変化したことを示している.熱天秤系は平成7年度後半に漸く測定可能な段階になり,酸素中に微量の一酸化炭素を含むガスが接したときのコバルト系ペロブスカイト型酸化物の重量変化の測定を単結晶試料を用いて進めた.900℃で1%程度の酸素を含む系に一酸化炭素を数百ppm〜0.5%導入することにより不定比酸素量の還元側への変化を示す重量減少が観測され,表面での一酸化炭素酸化反応により試料の酸化比量が熱力学平衡によって決まる値より更に還元側の値を示すことが検証された.