著者
二宮 紀子
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
no.50, pp.123-136, 2020-03-28

今年度4 月にМ L 教室が設置されたことを機に、幼児教育学科のピアノ演奏に関わる科目、特に「音楽基礎Ⅱ」( 1 年次後期開講)の準備講座を自主ゼミという形で開講した。また現行では子どもの歌の伴奏法の内容を扱っている「保育内容の指導法(音楽表現)」( 3 年次前・後期開講)の授業をМ L 教室で行った。本稿はこの2 つの実践の報告である。М L 教室では学生一人に1 台の電子ピアノが割り当てられるため、楽譜の読み方や子どもの歌の伴奏を考える際に必要となってくる音楽理論を、実際に弾いて音として確かめながら学ぶことができる。その利点を生かしながら、受講者全員でまずピアノの課題の楽譜を、あるいは子どもの歌を全員でドレミで歌い、拍に合わせてリズムを叩くという準備を行ってから弾くという学習を行った結果、読譜力の育成、音楽理論理解、ピアノの演奏技術習得に効果が認められたことを、講座終了後の学生の姿や授業終了後に行った学生アンケートの分析から見ることができた。日本の音楽教育で読譜や理論の学びを難しいものにしている原因の一つがドレミ唱法の混乱である。ハニホヘトイロハという音名を定めておきながら、固定ド唱法と称してドレミを音名としても使い、階名であるドレミとの混乱を招いた。ピアノを弾くというだけであれば、五線による楽譜もピアノの鍵盤も固定ドの原則で作られているので、固定ドだけを学べばよいと考える教員もいる。しかし、音楽のしくみ、音階や和音の機能などは移動ド(階名)の考え方に基づいていること、何より保育者になる学生達には子どもの声の高さに合わせて自在に高さを変えて歌える力を身につけてもらいたいことから、階名としてのドレミ唱法を理解してほしいと考えている。学生が、混乱を招きかねない2 種類のドレミ唱法を経験しながら奏法と理論をどのように学んだか、М L 教室ならではの学習の流れと工夫点を振り返り今後の授業実践に反映させたい。