著者
中尾 武久 二宮 英彰 藤原 正博 池田 暉親
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.935-939, 1981-09-15

抄録 逆さ眼鏡を使用した場合,逆転してみえる外界への適応の過程,すなわち,知覚的,行動的適応の機序をより詳細に検索するために,4人の被検者を用いて各種実験を行なった。 まず適応の過程についてみると,実験第1日では視野の動揺が著明で,外界はゆれ,現実性(reality)を失ない,書字・文字の判読は不能である。また自分の目的とする行動をなしとげるまでの時間が長く,拙劣であった。しかし,これらは実験日を追うごとにほぼ回復し,実験最終日には普段に行なっている行動はほぼ支障なくでき,自転車にのる程度までに回復した。また,視野の動揺による不快感,外界の異和感などは経時的に減少するのに対し,逆さ眼鏡を除去して歩行した場合にみられる船酔に似た眩暈感は次第に増強する傾向を示した。以上の所見の外に,眼球運動の経時的変動の所見をあわせ,適応の過程の神経生理学的意義について考察を加えた。
著者
二宮 英彰
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.247-252, 1997-03-01
被引用文献数
1 1

不安と抑うつには, 症状水準における重複があることがよく知られており, 診断水準の重複は共存と呼ばれている。プライマリーケアを受診する患者では, 公式な診断基準を満たさないが不安や抑うつ状態を示す例が多く, そのうち不安と抑うつが重複している例では, 社会的障害が大きく, 早期に認知し治療を行っても予後の改善がないという。強い不安症状を合併するうつ病を, 治療反応性や予後の観点から不安うつ病として分離する研究者もいる。国際疾患分類第10版では, 両者とも正式の診断基準を満たさないが不安と抑うつ症状が混在する混合性不安抑うつ障害という診断カテゴリーを新しくつけ加えた。共存という概念は, 診断のための生物学的指標がない精神障害診断のあいまいさに由来しているが, 治療という視点からみると, よりよい治療方略を提供するための手がかりとなりうるであろう。