著者
二本杉 剛
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

ヒトの社会行動の源泉を明らかにすることは、社会経済の制度設計において大変重要である。制度にどのようなインセンティブを含めるかにより、制度の効果は大きく異なる。ヒトの社会行動の源泉を知ることができれば、制度の目的に沿ったインセンティブを知ることができる。本研究では経済実験の手法を用いて観察されているいじわる行動と親切行動を中心に社会行動の源泉を明らかにする。いじわる行動とは、自己の利得を少し下げてまでも相手の利得を大きく下げようとする行動であり、親切行動とは、自己の利得を少し下げてまでも相手の利得を大きく上げようとする行動である。今年度は、実験結果を投稿して、現在、改定要求に対して検討しているところである.また、経済セミナー(経済学の雑誌)及び臨床精神医学、こころの科学(神経科学の雑誌)に研究成果をわかりやすくかつ簡略化して掲載した。実験結果は以下の通りである。被験者は親切にされたときには、吻内側前頭皮質の後部領域の活動があった。この脳領域は、モニタリングやコンフリクトに関わることが先行研究からわかっている。我々の実験は、正の互恵関係がある実験デザインであるため、被験者は将来より良い行動ができるように相手の行動をモニタリングしていたことがわかった。また、相手の親切行動に何かしらの奇妙な意図があると捉えていたことがわかった。つまり、親切にされることとは不自然なことであり、理解し難いことであると認識しているということである。