著者
藤井 正純 二村 美也子 蛭田 亮
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.321-325, 2022-09-30 (Released:2022-11-24)
参考文献数
8

覚醒下手術は, 脳内に染み込むようにして発育するグリオーマと呼ばれる脳腫瘍や, 薬でどうしても抑えられないような発作で困っているてんかんの症例に行われ, 成果をあげています。日本では世界に先駆けて覚醒下手術のガイドラインが策定され, 一定の条件を満たした施設を認定する制度が発足し, 健康保険の仕組みのなかに組み込まれるまでになり, 現在普及が進んでいます。覚醒下手術は, 脳機能のなかでも特に, 言語を含む高次脳機能を守る手術です。患者一人ひとりの社会背景や人生を考えて, 機能の温存と病変の切除の両立を目指して頑張る取り組みである一方, ここで得られる所見は, 高次脳機能に関するかけがえのない本物の情報でもあります。また, 脳神経外科医だけでなく, 評価者として脳神経内科医・言語聴覚士・作業療法士など多職種の連携が欠かせません。本稿は, そんな多職種の方々が, このやりがいのある手術に興味をもつきっかけになれば幸いです。
著者
二村 美也子 古場 伊津子 前澤 聡 藤井 正純 若林 俊彦
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.356-362, 2015-09-30 (Released:2017-01-03)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【はじめに】多言語話者で言語共通領域と特異領域の存在が知られているが, その関係について見解は一定ではない。【症例】再発左前頭葉腫瘍を有する48 歳男性。母語はポルトガル語で第二言語は日本語。成人以降日本に移住・日本語獲得し, 以後日本語を主に使用。覚醒下開頭腫瘍摘出術を施行。術中マッピングでは左下前頭回三角部で, 両言語で喚語困難を呈した (共通領域) 。また左中前頭回では, ポルトガル語のみ喚語困難や音の歪みがみられた (母語特異領域) 。【考察, 結論】本症例の特記すべき所見は, 共通領域と特異領域両者を認め, かつ中前頭回に母語特異領域を認め, 第二言語より母語で機能野の広がりが大きい点である。多言語話者の言語領域については, 母語・獲得時期・習熟度の他に, 環境下の使用頻度についてもその構成に影響を与える可能性があり, 多様と考えられる。機能温存目的のマッピングの際は, 各々の言語で評価する必要がある。
著者
前澤 聡 二村 美也子 藤井 正純 松井 泰行 若林 俊彦
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.226-233, 2014-06-30 (Released:2015-07-02)
参考文献数
20

脳腫瘍摘出の際,作業記憶の局在を術前に知ることは高次機能温存の鍵となる。我々は新たな手法として数唱課題 (digit span) を用いたfMRI を考案し,その有用性を検討した。4 人の脳腫瘍患者に対し術前評価として3TMR によるfMRI を施行。作業記憶局在評価のための数唱課題を行った。ブロックデザインで課題A では4 桁の逆唱,課題B では4 桁の順唱を行い,課題A から課題B を引き算し解析した。 結果として,左側の背外側前頭前野皮質 (DLPFC) (4/4 例) ,前部帯状回 (3/4 例) ,左頭頂間溝付近 (3/4 例) に賦活が認められた。これらの部位は他の言語機能タスクとは一部を除き異なっていた。本結果は数唱課題によるfMRI が作業記憶に関与する脳内局在を示している可能性を示唆する。N-back やreading span のfMRI より簡便であり負担が少ないため,脳腫瘍患者の術前評価として有用である。