著者
二渡 努
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
no.45, pp.161-178, 2021-03-18

2025 年度末までに年間6 万人程度の介護人材を確保する必要性が指摘され,介護人材の確保と定着は喫緊の課題となっている。本研究は,介護人材の確保と定着の促進に資する取組を明らかにすることを目的に,介護職員にインタビュー調査を実施し,設定した基本仮説,作業仮説に対して仮説検証を行った。 基本仮説は「介護業務と接する機会を有することが,介護分野に参入する職業選択要因となり,職場からのサポートを受け,勤続年数の上昇によって変化するやりがいを獲得することで,介護職員は就労を継続することができる」と設定し,作業仮説1 を「介護業務と接する機会を有することが介護分野での職業選択の要因となる」,作業仮説2 を「職場からのサポートが新人介護職員の就労継続要因となる」,作業仮説3 を「勤続年数の上昇によって,就労継続に必要となるやりがいは変化する」と設定した。作業仮説1, 2 は一部支持,作業仮説3 は棄却されたため,基本仮説は一部支持となった。 仮説検証を行う過程で,介護業務等に接する機会が少ないと思われる若年層には介護等体験により介護業務に対する理解を深める機会を提供することが介護分野への参入を促進する可能性があること,新人介護職員の一定期間の就労継続要因として,奨学金の返済免除などがあること,就労継続要因となるやりがいは,職位の向上,異動による施設種別や対象利用者の変更によって,変化することが示唆された。