- 著者
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加納 六郎
二田原 正憲
粟谷 壽郎
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.14-20, 1954
- 被引用文献数
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之まで日本に於いて報告されているCulex属, Culiciomyia亜属の蚊は2種あつて, その1つはアカクシヒゲカCulex pallidothorax Theobald, 1905であり, 他はキョウトクシヒゲカCulex kyotoensis Yamaguiti et Lacasse, 1952であり, いずれも暖地性の種で, 九州及び本州西南部に多産し, 東北地方及び北海道からは未だ発見されていない.なお琉球諸島には近似種リュウキュウクシヒゲカCulex ryukyensis Bohart, 1946を産する.著者等及び林滋生氏, 小出春記氏は, 1948年以来, 本州(伊香保, 富士山麓, 三ツ峠, 湯河原, 熱海, 箱根, 日光菖蒲カ浜等)及び九州(鹿児島県, 宮崎県等)に於いて, 成虫, 幼虫共に明かにCuliciomyia亜属の特徴を示し, しかも以上3種のいずれにも該当しない蚊を多数採集している.之を諸外国産の近似種と比較検討したが, 該当するものはなく, 之までに記載のない種と考えられるので, 茲に新種として記載し, 和名をヤマトクシヒゲカとする.なお学名の種小名sasaiは, 第二次大戦中から戦後にかけて, マラリヤ及び蚊の研究面における大なる進歩に著しい貢献をされた東京大学助教授佐々学博士の名を記念したものである.