- 著者
-
五十君 麻里子
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本年度は、ローマ法における合意についての研究を行うため、とりわけ諾成契約と問答契約の関係に着目した。合意のみによって効力を発生する諾成契約はローマで「発明」されたと言われるが、この諾成契約に伴いあわせて問答契約も締結されるケースがまれではなかった。このことは、売主の担保責任が売買契約訴権で追求できるようになったのちにも、担保責任を問答契約で設定していると思われる事例が扱われていることからもわかる。またウァッローの『農書』にも家畜売買のマニュアルとして、重畳的に問答契約を締結することが勧められる。このような事例から、必ずしも合意の法的効力が当然と認識されていたのではないのではないか、との仮説に達し、2005年10月に熊本大学において開催された日本法制史学会研究大会にて「合意の法的効力-諾成契約債務と問答契約債務の関係をてがかりとして」と題し、報告を行った、さらにこの研究成果については、本経費から一部支出して招聘したエラスムス・ロッテルダム大学、タモ・ワリンガ博士とフローニンゲン大学、ヨハネス・ロキン教授をアドヴァイザーとして迎え、貴重なご意見をうかがった(両先生はこれ以外にも本務校にてそれぞれ2度の講演をおこなっていただいた)。この研究に際しては法学関係文献のみならず、ひろくローマ史文献の渉猟が必要であったため、これにつとめた。