著者
五十嵐 成見
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第31巻, no.第2号, pp.67-84, 2019-03-20

本論文では,フィンランドにおける高福祉国家の形成に関するキリスト教の影響及びその歴史的特質を,フィンランド・キリスト教史及びキリスト教社会福祉史の観点から論じている。フィンランドでは,福音ルーテル教会を国教として導入した准国家として形成された当初から公的行政と教会の協働・連携が為されていた。ただ包括的なものとはなり得ず,その不十分さを補足する以上の形で展開されたのが女性キリスト者らによるディアコニッセの働きであった。また,ルーテル教会外部から生じた自由教会によるヴォランタリーの福祉活動も大切な役割を果たした。現在の高福祉制度へと至る過程にはこれらのキリスト教的働きが不可欠に存在しており,また今日においても重要な役割を担っている。