著者
五十嵐 芹菜
出版者
東京女子大学言語文化研究会
雑誌
東京女子大学言語文化研究 (ISSN:09187766)
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-30, 2022-03-31

本研究は、日本語の語形成の一種である短縮について論じる。先行研究から、日本語の複合語短縮では短縮された語の多くが 4 モーラ語であり、その大半が短縮される前の複合語の前部要素の語頭 2 モーラと後部要素の語頭 2 モーラを結合したものであるなど、いくつかの形成パターンが明らかになっている。本研究は、アニメーション作品の題名における短縮語形成を分析し、先行研究で明らかにされていない 3 要素以上からなる複合語(多要素複合語)や句、文の単位においてどのような短縮語形成パターンがあるのか、その形成要因および特徴はどのようなものか、また、短縮語形成時にどのような要素が残されるのかを分析、考察することが目的である。近年のアニメーション作品 456 作品を調査し、得られた短縮された名称、合計 276 事例を分析対象とした。短縮された名称を作品名の構成単位ごとに、単純語、複合語、多要素複合語、句、文に分類し、それぞれについてモーラ数や形成パターン、変音現象、形態素などの観点から分析を行った。分析の結果、アニメーション作品の題名における短縮語形成では、「語頭 2 モーラ+語頭 2モーラ」の 4 モーラ語の形成が最も生産性が高いことが分かった。多要素複合語、句、文における短縮語形成では、複合語の短縮語形成と異なり 5 モーラ以上の語も一定の割合で形成されることなどが分かった。また、短縮語として残される要素は固有名詞が優先され、固有名詞が無い場合は 2 語以上を結合し短縮する傾向があると明らかになった。