著者
五十嵐 茂
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.99-115, 2014 (Released:2020-07-10)

森は経験の出来という事柄について考え抜いた思想家である。本稿の目的は,現在に至るまで充分に理解されているとは言えない森の経験の思想の内在的理解をまず深めることである。そしてその理解を「人生の物語」=ライフストーリー研究の課題に繋げる。森の経験は単なる認識論的なそれではない。経験とは,その現れによって生を充たし組織する生実践そのものである。森は,そのような経験の発見と生成のプロセスを,経験世界を充たして現れるものの到来によって描いた。ものの到来が引き連れる「まとまりをもったもの」の出現によって言葉の意味を充たし定義し,それを内容として形成される思想を求めた。私のもとへと世界が出来する過程を明らかにすることは,森の言う「意味が存在に通じる道」すなわち意味の出来事をとらえ,描くことである。そこにおいて意味が対象と経験の間を往還する姿をとらえることができる。そのためには,語義的意味を超えて文脈において凝集する意味のふるまいをとらえる生成的意味論の視点を必要とする。それを繋ぐ環としてヴィゴツキー意味論が言及される。生の文脈をくぐり抜け,「生の主題」へと凝縮する意味のふるまいは,人生の物語研究における「経験の組織」「その意味づけ」における「意味の凝縮による生の主題の形成」をよくとらえるものとなる。
著者
五十嵐 茂
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.242-262, 2019 (Released:2021-04-12)

自己エスノグラフィは,個人的な生の経験が,自分自身の思考,感情,内面の葛藤を含む形で記述される。そこ にはその解釈を助ける理論や文化が組み込まれる。本稿において分析されるのは,編集者として活動してきた著 者が,印刷会社に転職した経験の中で起きた出来事である。その職場で二種類の時間と直面する。それは,出版 社における編集者の仕事を支配する能動的企画的な時間と印刷会社におけるマンアワーコストという企業原理が 支配する時間という,二つの異質な時間であった。そこにおいて,筆者の編集者としてのキャリアは激しく揺さ ぶられる。その経験を分析し,自己のまとめ上げにかかわる二つの感覚の対抗と葛藤を取り出す。リクールは, 物語において意味を生み出す過程を統合形象化として分析した。それは単なる出来事の羅列から,一つの物語を 作り出す意味の取り出しである。彼が分析した「意味論的空間」と呼ばれるそれは物語の成立を左右する。自己 物語においてその空間を生み出すのは,自己のまとめ上げによって生み出される〈まとまりある自己〉である。 そしてそれが生み出す意味は,現実の社会関係におけるポリティクスの渦に巻き込まれる。そこで生まれる〈自 己まとまりの崩されと回復〉が,自己エスノグラフィのドラマを生み出す。そこに働いているのは〈意味の崩さ れと回復〉の文脈である。
著者
熱海 明 青柳 澄 小野 精美 鈴木 武 鈴木 肇 栗原 幸一 西塚 胞喜 岡 英彦 二戸 源治 梅沢 長一 木村 広 安孫子 淳一 高梨 勝広 山口 正志 丹羽 与英 中村 春夫 高槻 和雄 遠藤 厳 岡田 昌吉 佐藤 幸雄 東海林 喜助 斯波 八郎 奥山 繁雄 五十嵐 茂 斎藤 安司 菊地 正逸 槙 千秋
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.521-526,539, 1964-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22

A total of 244 persons were reported officially to be involved in an outbreak of food poisoning possibly attributed to whale-meat bacon in Yamagata and its neighboring areas in Yamagata Prefecture at the end of August. One fatal case occurred in the city of Yamagata.The period of incubation was 12 to 21 hours in most cases. The main symptoms consisted of fever, stomachache, vomiting, and diarrhea and were almost identical with those of food poisoning known to be caused by enteritis vibriones.The incriminated food was whale-meat bacon, which had been eaten without being cooked. The same food as this, in raw state, was given per os to mice and cats without any ill effect. Bacteriological examination failed to detect any known pathogenic organisms, except staphylococci, or such enteritis vibriones as identical with those of the known serotype.Enteritis vibrio O-2 (“E” by Agatsuma's classification) was detected from 19 (76%) of 25 fecal specimens collected from the patients involved. Staphylococcus and Proteus were also detected from these specimens. Most of the staphylococci isolated from the whale-meat bacon, and the fecal specimens were coagulase-positive.All the strains of enteritis vibriones isolated from the fecal specimens were pathogenic for mice. So were three strains of these organisms isolated from the whale-meat bacon.