著者
中 尚義 五十里 啓司 成澤 海舟 橋本 巨
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会論文集 (ISSN:13465260)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.71-81, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
22

トンボは飛翔のための空気力を得るために三次元的な流れを生成している.しかしながら,トンボの自由飛翔時の三次元流れは実験的には未だ明らかでない.本研究では実験的に三次元流れを明らかとするため,断層撮影を用いた可視化実験およびPIV解析を行った.断層撮影では測定の再現性が重要となることから,可視化実験にはトンボの羽ばたき運動を模擬した羽ばたきシミュレータを使用した.流れの可視化は前方および側面方向の2方向から行った.その結果,直線飛翔時のトンボは翅の中央部において後方に向かって強い流れを生成していることが確認された.また,翅の基部方向に向かって流れが引き寄せられていることが明らかとなった.これは後方に向かう強い流れによって横方向から流れが引っ張られていると考えられる.このことから,直線飛翔時のトンボは翼幅方向の余分な流れを作らず,後方への強い流れのみを生成しているといえる.