著者
渡辺 喬 高木 康 五味 邦英 岩田 隆信
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.512-517, 1995-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

脳神経疾患における血清CKおよびCKアイソザイムの変動をクモ膜下出血, 脳内出血, 脳梗塞, 脳腫瘍, および頭部外傷を対象として検討した.診断は, 病歴, 症状, 髄液所見やCTスキャン, 脳動脈撮影により行った.血清総CK活性は, クモ膜下出血, 脳内出血では症例によるバラツキが大きく, 健常基準値より異常高値となる症例はそれぞれ4例 (20%) , 3例 (33.3%) であった.これはCKアイソザイムについても同様であり, 非CK-M活性はクモ膜下出血では症例によるバラツキは大きいが, 平均値は健常対照群の約2倍であり, 3例 (15%) に電気泳動法でCK-BBが検出された.これらに対して脳腫瘍や脳梗塞では血清総CK活性は健常対照群とほぼ同値であり, 異常高値となる症例もほとんどなかった.また, 外科的治療による経時的変動では術後1~1.5日で血清総CK活性は1, 500~2, 500IU/lの極値となった後に漸次低下し, 術後1週間でほぼ健常基準値に復する経過であった.これは非CK-M活性, CK-MB蛋白量も同様であり, 症例によっては術後1~2日に電気泳動上でCK-BBが検出された.CK-BBと疾患の重症度, あるいは手術時の侵襲の程度との間の関係については詳細な分類による検討は行わなかったが, 直接的な因果関係はないように思われた.