- 著者
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五嶋 陽子
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.116-142, 2014 (Released:2021-10-26)
- 参考文献数
- 20
インドの支出税の失敗はカルドア勧告と支出税法との乖離によってもたらされたという先行研究を踏まえて,その乖離を生じさせたのは何かについて考察した。そこで明らかになったことは,支出税法の立法化を通じて第1に,累進付加税の代替税としての役割を全面的に押し出す動き(所得とのリンクの設定)と抑制する動き(直接税控除の設置)という相矛盾する規定が取り込まれたことである。第2に,総人口の約8割がヒンドゥー教徒で構成されるインドにおいて,ヒンドゥー未分割家族が消費の単位としてのみならず家族事業体という生産の単位でもあり,先祖継承財産の運営管理を行う単位であり,ヒンドゥー教に基づく結婚の儀式を行う主体であったことから,基礎控除,両親の扶養費控除,結婚披露費用控除を認めざるをえなかった。この乖離は建国後の国民統合を国家目標とする流れおよびヒンドゥー未分割家族の税制上の史的取扱いと合致するものであった。