- 著者
-
井上 久志
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.4, pp.1-28, 2004-03-09
本稿では先ず論者夫々に多様な「グローバリゼーション」の定義とその含意を既存研究に基づいて整理した。また、その歴史的な起源について、長期に及ぶ貿易額の対GDP 比などを見ても、趨勢的に上昇傾向にあるものの近年顕著に上方屈折しているわけでもなく、量的な拡大だけで今日の「グローバリゼーション」は過去に前例がないとは断じ得ない。ところで、「GlobalizationIndex」というものが発表されている。本稿では、同指標に基づいて、その進展度合いを、各国の政治、経済などの諸側面から分析を試みた。また競争力指標として知られている、IMDやWEFの各国ランキングとの相関も分析された。先述したように今日の「グローバリゼーション」の基本的な特質は国際経済活動の単なる拡大にあるわけではないので、専ら質的な面での今日的特殊性が探索される。本稿は、その起源を1971年のドル危機に求め、変動相場制移行後も米国の経常収支が恒常的に赤字を記録し、結果として世界中の資本を吸引し続けなければならなくなった点に求めている。その国際金融システムはガバナンス能力という点で、不断に膨張し続ける金融フロー及びストックの量との相対比で衰微しつつあると指摘する。