著者
井上 元男
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は濃縮海水馴化クロレラ(高温株,中温株)を冬眠化(休眠化)処理をほどこし,高密度な液状,ゼリー状,乾燥粉末化して生体保存する基礎的研究を行なうことにある.方法,材料:本実験は1991年4月から1993年1月まで、折戸校舎内研究室で行なわれた。実験材料として用いられたクロレラは高温株(適温35℃)Chlorella sp.中温株(適温25℃)Chlorella elipsoideaである。濃縮には遠心分離株が使用され,冬眠化(休眠化)処理がほどこされ,塩分濃度別10%,30%,35%,50%,70%のクロレラにつき1週間〜1ヶ月間の液状,ゼリー状,乾燥粉末の保存実験がなされ,復元培養クロレラの細胞数,細胞径の測定がなされた、得られた主な結果は次の如くである.結果:1).高温株,中温株に対する階温別休眠化処理実験から,最適休眠処理温度は高温株に対して5℃,中温株は0℃であった.2).濃縮海水馴化クロレラ(1×10^8cells/ml)を利用し,遠心分離株を使用し,更に濃縮したクロレラを液状,ゼリ状化して保存実験を行ない、高温株を5℃,中温株0℃で休眠化処理および同温度で低温保存したものは塩分濃度30%,50%,70%のクロレラを1ヶ月保存出来ることが判明した.3).塩分濃度50%,35%,70%の高温株を乾燥粉末(常圧乾燥)にさせたものは中温株と同様、休眠化処理をしたものはしないものよりも保存後の復元培養で高い増殖を示し、1ヶ月以上保存可能の見通しが得られた.4)コペボウダに対して,基本食としての保存クロレラ利用を試み,成果を見た.また、耐温性の高い高温株の採集にも成果を見た。5)以上の成果から特に高温,高塩な海水馴化クロレラを乾燥させて冬眠化保存させ1ヶ月以上の保存させられる可能性を見出したことは特筆されよう.