著者
井上 博愛
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1985

本研究においては、空気、又は酸素のみを酸化剤として、熱・触媒電気あるいは光を利用して、排水中の汚染有機物質の効率よい酸化除去プロセスの確立をめざすもので、5つの分担課題により研究が行われた。1.触媒湿式酸化反応による難分解汚染物質の除去:難分解性物質の酸化コバルト触媒による酸化速度を解析し、総括の速度式を導いた。その速度と種々の物質の水素引き抜きの難易とが、よい対応を示すことを明らかにした。さらに、触媒充填における工学的課題についても検討を加え、装置内で効率よく反応を行わせるための触媒担持方式を明らかにした。2.湿式酸化反応による有機汚染物質の改質除去:湿式酸化処理による廃液の好気性生物処理実験を行い、湿式酸化によって、廃液の生物分解性が向上することを明らかにしたが、さらに生物処理の効率を高めるため、新たに開発した多孔質樹脂を利用した生物膜を用いた実験を行い、条件によっては可成りの効率の向上が認められた。3.電解酸化分解による廃液処理の高度化、過酸化水素生成条件および、分解に伴う廃液の酸化処理過程との効率よい結合をめざし、処理装置の設計と、その最適条件の検討が行われた。1段プロセスおよび2段プロセスの、両者の経済評価が行われた。4.高活性触媒を用いた廃液の常温処理:疎水性ポリマー担持白金触媒の調製法を改善し、高分散化をめざすことによって、アルコールの直接酸化活性を著しく向上することが出来た。さらに、二元金属化および分解促進機能を有する担体の利用が試みられた。5.光触媒を用いた廃液の常温処理、酸化チタンの光触媒作用、微量金属銅添加効果を明らかにし、トリハロメタン類の有機汚染物質の脱塩素分解反応を行わせ、その脱塩素速度、および分解速度の解析が行われ、光触媒が極めて優れた効果を与えることを見出した。