著者
井上 寛也 砂原 央 谷 健二 井芹 俊恵 堀切園 裕 板本 和仁 伊藤 晴倫 中市 統三
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.41-45, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
11

12歳齢、雄のミニチュアダックスフンドが急に発症した嘔吐と食欲不振を主訴として、山口大学動物医療センターに来院した。血液検査では肝酵素と炎症マーカーの上昇が見られた。また、腹部の超音波検査ならびにX線CT検査では、胆嚢内にガスの貯留と結石が認められた。また、胆嚢内のガスの一部は腹腔内にも存在している可能性が示唆され、胆嚢破裂が疑われた。試験開腹では、肉眼的に重度な炎症を伴い、肝葉と癒着した胆嚢が認められた。胆嚢は肝葉との癒着の剥離の後に切除され、切除された胆嚢は肉眼的に内外の2層に解離しており、病理組織学的検査では重度の壊死を伴う化膿性炎症が認められた。また、その内容物から腸球菌が分離された。以上のことから、本症例は腸球菌の胆嚢内への感染による胆嚢壁の損傷を伴った気腫性胆嚢炎と診断された。動物の手術後の回復は良好であった。