著者
村田 安哲 板本 和仁 磯崎 恒洋 原口 友也 西川 晋平 檜山 雅人 谷 健二 井芹 俊恵 伊藤 晴倫 中市 統三 田浦 保穂
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1+2, pp.10-14, 2019 (Released:2020-05-08)
参考文献数
12

我々は膀胱から尿道に渡る移行上皮癌と診断された症例に遭遇した。症例に対し、膀胱と尿道の全摘出術を適用し、排尿機能維持のために小腸の一部を用いて導管を作成、腹壁への尿路変更を実施した。術直後から良好な尿流出を認め、造影X線CT検査では小腸導管は造影効果が認められ、血流は良好であることと良好な尿の排出が確認された。術後397日の定期検査では全身状態は良好に維持されていたが、術後495日目に斃死した。下部尿路系の移行上皮癌に対し、獣医学領域における新たな治療法が示唆された。
著者
井上 寛也 砂原 央 谷 健二 井芹 俊恵 堀切園 裕 板本 和仁 伊藤 晴倫 中市 統三
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.41-45, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
11

12歳齢、雄のミニチュアダックスフンドが急に発症した嘔吐と食欲不振を主訴として、山口大学動物医療センターに来院した。血液検査では肝酵素と炎症マーカーの上昇が見られた。また、腹部の超音波検査ならびにX線CT検査では、胆嚢内にガスの貯留と結石が認められた。また、胆嚢内のガスの一部は腹腔内にも存在している可能性が示唆され、胆嚢破裂が疑われた。試験開腹では、肉眼的に重度な炎症を伴い、肝葉と癒着した胆嚢が認められた。胆嚢は肝葉との癒着の剥離の後に切除され、切除された胆嚢は肉眼的に内外の2層に解離しており、病理組織学的検査では重度の壊死を伴う化膿性炎症が認められた。また、その内容物から腸球菌が分離された。以上のことから、本症例は腸球菌の胆嚢内への感染による胆嚢壁の損傷を伴った気腫性胆嚢炎と診断された。動物の手術後の回復は良好であった。
著者
井芹 俊恵
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-7, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
46

オピオイドはその強力な鎮痛効果により周術期疼痛管理に重要であることは確かだが、煩雑な麻薬管理が必要であり、大量に投与した場合の術後の疼痛過敏や術後早期の食事開始を妨げる消化管運動の抑制、あるいは人医療では医療用オピオイドの乱用などからマルチモーダル鎮痛などの鎮痛方法を組み合わせることでオピオイドの使用量を減らす試みがされている。そのため最近、局所麻酔薬を用いた局所麻酔が注目されている。強い鎮痛効果による外科的ストレスの抑制、呼吸抑制がなく、術後の消化管運動を抑制しない点などに加え、抗炎症効果による周術期の過剰な免疫応答を抑制し、また、腫瘍免疫を含む免疫機能を抑制しないことから、麻酔方法の選択が患者予後に影響する可能性が考えられる。腫瘍疾患症例動物への予後に関する臨床研究としては今後大規模な前向き研究の結果が待たれる。