著者
長谷川 浩一 沢山 俊民 鼠尾 祥三 忠岡 信一郎 覚前 哲 中村 節 井上 省三 河原 洋介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.22, no.8, pp.903-907, 1990-08-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

陰性U波(NU)および「右側胸部誘導のT波減高を伴うU波増高(PU)」は,高度冠狭窄枝ないし心筋虚血領域と関連が深い心電図指標と考えられている。今回,発作時の12誘導心電図記録が得られ,かつ冠動脈造影で少なくとも1枝以上に75%以上の狭窄を有する狭心症84例を対象として,NUとPUの罹患枝別出現誘導部位・出現時相について調査した.LAD狭窄では,NUはV4(59%)>V5(56%)>V6(37%)>V3(33%)の順に前胸部誘導に出現したが,PUは1例にもみられなかった.LCX狭窄では,NUはV6(52%)>V5(48%)の左側胸部誘導に,PUはV2=V3(86%)>V5=V5(43%)に出現した.RCA狭窄では,NUはIII(29%)>aVF(24%)の下壁誘導に,PUはV2V3(63%)>V4(44%)>V51(26%)に出現した.発作時心電図上のQ-NaU時間とQ-PaU時間とQ-PaU時間が等しいことより,NUとPUは同一領域の心筋虚血に起因するものと考えられた.また右側胸部誘導と食道誘導心電図の同記により,PUは後壁虚血の表現と考えられた.したがって12誘導心電図上のNU出現誘導部位および右側胸部誘導のPUを検討することは,狭心症の罹患枝推定に有用と思われた。