著者
植田 史朗 井上 竜治
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.36-40, 2008-01-25 (Released:2016-10-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2

背景.餅誤嚥は,直ちに窒息状態に陥ることが多く,救命が困難となりやすい.症例.78歳男性.2002年に脳梗塞の既往あり.食事中突然の呼吸困難を認め来院.左肺呼吸音は減弱し,重症急性呼吸不全を呈していた.喉頭展開上気道閉塞はみられなかった.胸部CTにて左上幹・下幹及び右底幹の気管支内に高吸収値を示す物質を認めたため,緊急気管支鏡検査を施行した.吸引・生検鉗子・キュレット・スネアを用い,気管支に閉塞していた異物(餅)を全て除去することにより,呼吸不全は直ちに著明改善した.結論.餅による多発気管支閉塞により急性呼吸不全を認め,救命しえた1例を経験した.餅摂食中に突然発症した呼吸不全では,喉頭展開で異常を認めなくても,餅による気管支閉塞の鑑別を要する.餅はCTにて高吸収値を呈するため,餅誤嚥の診断においてCTは気管支鏡前検査に有用である.気管支鏡検査にて診断の確定と救命が可能であった.