著者
池田 隆政 井上 耕介
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.878-883, 2008-08

6月下旬から7月中旬はわが国におけるニホンナシの果実発育最盛期である。同時に、翌年の花芽が分化、発達する時期でもあり、当年および翌年の栽培の善し悪しに大きな影響を与える時期である。ところがこの時期は梅雨に当たり、多雨、日照不足になることが多い。これまでの事例を見ると梅雨期間中に雨が多かった年は作柄が悪く、空梅雨で梅雨明け後も干ばつ気味に経過した年は作柄がよい。すなわち、梅雨時期の降雨(曇天の影響もある)が、ナシの品質に大きな影響を与えていることがわかる。しかし、長雨年においても比較的良い果実を出す園がある。また、傾斜地の果樹園は長雨年に平坦地の園が小玉に泣く中で大玉を出荷している。これらの園に共通しているのは、排水が良いという点である。「ナシ園を拓く際は、松の大木が育つ地を選んでいた」という古老の話は、昔からナシ栽培に排水性が重要視されていたことを伺わせる。排水性の改善は、梅雨の影響を最小限に抑えるために不可欠なものである。排水対策として最も一般的な方法は暗渠を入れることである。しかし、暗渠の設置には多額の資金を要するうえ、年数の経過とともに排水効果がなくなったという事例も聞く。こうしたことから、われわれは、「農家が行いやすく(安価、簡単)効果が持続する排水改善技術」の確立を目標に試験に取り組んできた。ここでは、これまでに鳥取園試で取り組んできた排水改善技術と新たに開発した「半明渠排水法」について紹介する。