著者
井上 良和
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.129-137, 1980-05-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

1.コサギEgretta garzettaの非同時孵化に至る過程を明らかにするために,1977年に三重県で調査をおこなった。2.47巣を調査対象とし,特に12巣において48日間の巣を中心とした終日の行動観察をおこなった。3.営巣開始からヒナの巣立ち後までの全繁殖過程を,5つのステージ,すなわちステージ1(造巣期),2(産卵期),3(抱卵期),4(巣内育雛期),5(巣外育雛期)に分けた。4.産卵はほぼ1日半に1卵ずつおこなわれ,一腹産卵数は平均4.86卵(4-7卵)であった。5.抱卵は両性によって初卵産下後ただちに始まり,その後,抱卵率(1日の観察時間に対する抱卵時間の割合)は急激に増加し,通常第2-3卵産下以降に完全抱卵(抱卵率80%以上)になった。また,抱卵日数は平均23.44日であった。6.ヒナの孵化には時間的ずれがみられ,初卵と第2卵ないし第3卵までは孵化のずれは近接し,第3卵ないし第4卵以降,孵化間隔は産卵間隔(およそ1日半)に近づいた。7.完全抱卵になる過程と,各卵の孵化のずれ方がよく平行していることは,卵の本格的な発生が抱卵開始とともに始まり,孵化までに要する時間が抱卵の積算時間によることを強く示唆している。8.以上の結果をもとに,同時孵化と非同時孵化について若干の論議をおこなった。