著者
Noritomo Kawaji Yasuhiro Yamaguchi Yukihiro Yano
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
Journal of the Yamashina Institute for Ornithology (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.80-88, 2002-10-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

栃木県において,野外個体群の回復のために放鳥されたヤマドリ養殖個体の運命について,狩猟者からの足環の回収報告結果およびラジオトラッキング調査から調べた。1989年から1997年にかけて放鳥されたオスのヤマドリのうち,放鳥時に装着された足環が狩猟者により回収されたのは1.3%であった。また,回収された個体のうちのほとんどが,放鳥されたのと同じ狩猟期に得られたものであり,2年以上生存した個体は,わずか0.3%に過ぎなかった。栃木県県民の森で行った放鳥ヤマドリに対するラジオトラッキング調査の結果,短い寿命(平均11.4日)であることがわかった。栃木県で放鳥した場所と足環が回収された場所との間の直線距離を算出したところ,それほど大きな値は得られなかったが(平均で14.6km),40km以上移動したと思われる個体が複数個体存在し,最高で87km移動した個体もあった。今回の結果から,現在の放鳥方法では放鳥の所期の目的を達成することは困難と思われる。そこで,オスの放鳥場所をこれまでの鳥獣保護区から可猟区にすることやメスを繁殖期直前に放鳥するなどの改善策を提言する。
著者
江口 和洋 久保 浩洋
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.32-39, 1992-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
18
被引用文献数
6 5

1.史料に基づき,日本におけるカササギの生息の起源について検討した。2.16世紀以前の史料にはカササギに関した具体的な記述はほとんどなく,17世紀以降の史料にはカササギの生息地,生息地域における呼称,習性などの記述が見られる。3.17世紀以降の江戸時代には,カササギは福岡,佐賀両県の有明海沿岸(旧柳川,佐嘉藩領内)で多く目撃されている。4.17世紀前半には,カササギが朝鮮半島より人為的に渡来したとの認識が広まっていた。5.佐嘉藩ではカササギをもたらした人物の名が記録されている。6.佐嘉藩ではカササギは捕獲禁止の対象となり,17世紀に禁止令が何度か発令された。7.史料検討の結果,カササギは17世紀以降に朝鮮半島より旧柳川,佐嘉藩領内へ移植され,藩主の保護策により個体数を増加させたと,推測される。
著者
今村 知子 杉森 文夫
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.247-252, 1989-09-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
8

1.羽色などの外部形態に基づく繁殖期のカルガモの雌雄判別を試みるため,栃木県内で得られた80個体を材料に,雌雄による外部形態の違いを観察した。2.上尾筒,下尾羽及び腹に雌雄の差異が認められた。中央尾翼,翼鏡,三列風切及びみずかきの色にも変異が認められたが,雌雄の違いによるものであるとは判断できなかった。3.カルガモの雌雄判別を行う場合,上尾筒,下尾筒及び腹が有効な部位であるといえる。4.野外においてカルガモを観察する場合,至近距離であれば雌雄を判別することは可能であると思われる。
著者
黒田 長久
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.321-355, 1971-12-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

The myological illustrations here presented are based on more than ten examples of Columba livia (Carrier Pigeons killed by cats), studied during 1945-46. The illustrations have been so devised as the origin and insertion of each muscle could be shown not hidden by other muscles, by restricting the number of muscles in one illustration. The originals were prepared with different colors by muscle belly, tendon and bone, but here they are reproduced by ordinal drawings.Appendicular (wing and leg) and caudal muscles only are illustrated (partly cited in author's previous works) and listed, according to Berger's (George & Berger, 1966) nomenclature, and the names used by the author in his previous works are added to the list when different from Berger's. Minute muscles, one in the wing (on radiale) and three of caudal region, are additions to Berger's list, though their further confirmation is necessary. Illustrations of muscles of Columba livia other than figured here are to be found in the literature given in this paper.
著者
G. K. Menon
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-12, 1984-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
69
被引用文献数
5 9

本論文は,まだあまり注目されていない鳥の皮膚の腺機能について,得られた情報を総合しようと試みたものである。鳥の皮膚において形態的にはっきりした腺は尾腺,外耳管の中の耳道腺及び肛門(総排泄口)の皮膚腺である。これらのうち,尾腺のみがいろいろの方法で研究されてきたが,他の2つの分類と機能は,現時点では不明確である。全分泌腺は類脂質を分泌するが,その構造および機能は尾腺と非常に異っている。そして肛門腺は鳥の皮膚に見られる唯一の粘液分泌腺である。このように鳥の皮膚は,大まかな調査では,他の脊椎動物の皮膚と比べて腺機能が貧弱であるかのように見える。しかし,鳥体の表皮細胞は独特の脂肪生成の可能性を持ち,ケラチン及び類脂質に似た皮脂分泌物を出すのである。くちばしや脚指の皮膜のように特殊化した部分だけでなく,皮膚の無毛の部分における表皮細胞は,皮腺硬蛋白細胞の名の如く,非常に高度な脂肪分泌活動を示す。この表皮類脂質分泌は次の諸点-すなわち,皮膚の水反発性を高めること,皮膚面からの著しい水分消失の防止,有害放射線の遮断,皮膚への色の伝達等-に関係していると思われるので,これを論じた。表皮類脂質分泌の一般的性質と,いろいろな種の鳥の特殊な形態の羽毛の多くが,装飾的な目的に使用される粉末様物質,油性物質を生成しその供給を維持しているという知識を踏まえて,分泌活動の概念について再検討した。一般に認められた腺の概念にそぐわないところもあるが,機能を基準に考えれば,分泌腺を有する表皮と特殊化した羽毛は,皮膚の腺構造単位のものであると見なすことができると提案したいのである。
著者
長 雄一 綿貫 豊
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.107-141, 2002-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
102
被引用文献数
26 33

北海道の海鳥類の保護及び研究を進めるために,既存の調査報告書を収集して,飛来数あるいは繁殖つがい数といった繁殖地サイズの動向と海鳥類の繁殖に対する人為的攪乱及び自然界での攪乱について分析を行った。北海道では少なくとも12種の海鳥類が繁殖している。繁殖規模の概数は,ウミガラス(Uriaaalge),10つがい以下;エトピリカ(Lunda cirrhata),15つがい;ケイマフリ(Cepphus carbo),100つがい;ウミスズメ(Synthliboramphus antiquus),20つがい以下;ウトウ(Cerorhinca monocerata),300,000つがい;オオセグロカモメ(Larus schistisagus),10,000つがい;ウミネコ(Larus crassirostris),30,000つがい;チシマウガラス(Phalacrocorax urile),25つがい;ウミウ(Phalacrocorax capillatus),3,000つがい;ヒメウ(Phalacrocorax pelagicus),10つがい;オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas),120つがい;コシジロウミツバメ(Oceanodroma leucorhoa),900,000つがいであった。その他にマダラウミスズメ(Brachyramphus perdix)の繁殖については不明である。天売島のウミガラス繁殖地にいた成鳥数は,1938年から1980年の間に年平均で12.2%ずつ減少しており,1981年から1994年の間には年平均で26.6%ずつ減少し,1998年には7つがいが確認されたに過ぎない。モユルリ島のウミガラスについて,その繁殖地にいた成鳥数は1965年から1985年までに年平均で24.8%ずつ減少したが,1985年以来飛来個体が確認されておらず,繁殖地が消失したと考える。さらにモユルリ島エトピリカ繁殖地周辺にいた成鳥数は1960年から1995年の間に年平均で10.0%ずつ減少しており,現在ではユルリ•モユルリ島を中心に15つがい前後が繁殖していると考えられる。ケイマフリでは,天売島において年平均8.8%ずつ,ユルリ島においては14.4%ずつ減少しており,北海道全体の生息数も100つがい程度と考えられることから,この減少傾向が続くと繁殖地の消失も考えられる。その一方で,モユルリ島のウトウ繁殖地サイズは1960年から1996年の間で年平均14.2%ずつ増加していた。過去30年間の間にオオセグロカモメは増加傾向にあると考えられたが,モユルリ島の繁殖地サイズは1982年から減少に転じ,1996年までで年平均7.0%ずつ減少していた。天売島のウミネコは,1980年代には3万つがいが営巣していたが,ネコ等の捕食により1990年代に半減した。その一方で利尻島のウミネコは1987年に新たな繁殖地が形成されて以来,年平均19.5%ずつ増加し,現在では1万つがい以上が営巣するに至っている。調査報告書に攪乱の記述のある繁殖地は14箇所であった。カモメ類あるいはカラス類による攪乱の記述があったのは12箇所,死因が漁網への混獲との記述があったのは8箇所,人為導入されたドブネズミ類あるいはネコによる攪乱の記述があったのは5箇所であった。日本の海鳥類繁殖地の多くは,鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律等によって保護されている。しかしながら,繁殖地周辺の採餌域あるいは越冬域といった場所は保護の対象となっていない。そのため,海鳥が混獲しにくい漁具を開発することや,繁殖地周辺での漁業活動を見直すこと,あるいは石油流出事故に対応するたあの体制構築の必要があろう。また,人間によって繁殖地に導入された,あるいは人間の出すゴミによって増加したドブネズミ,ネコ,カモメ類,カラス類等の影響について考える必要があろう。

5 0 0 0 OA 四不像盛衰史

著者
高島 春雄
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.5-14, 1952-12-05 (Released:2008-11-10)

Père David's deer (Elaphurus davidianus) is a member of the deer family but in China, since her olden days, it was considered to be a mysterious animal whose hoofs resemble somewhat to that of cattle, its head to that of horse, its body to that of ass, and its antlers to that of deer but it does not belong to any of these. Since it became extinct in China, there is no way of ascertaining its native habitat. Those first discovered in China were found in the Imperial Park in Peking where the herd was extirpated by 1900. In 1888 a pair from Peking reached the Uéno Zoological Garden, Tokyo and gave birth to two offspring while one, a female, reached its maturity. Unfortunately however, all the four died one after another toward the end of the Meiji Era, thus no living individual could be found in the Orient.Specimens of Père David's deer preserved in Japan to-day are as follows:-1) A mounted head of a male with antlers and a skull of another with abnormal antlers are preserved in Dr. Hachisuka's collection.2) A complete skeleton of a male a and a skull with antlers are preserved in the National Science Museum, Tokyo.3) A mounted female and an antler are preserved in the museum of the Gakushâin University, Tokyo.In the present article the author fully explains the details of specimens preserved in Japan to-day, introduction and status in the Japanese zoo, the past history in China and subsequent waning of its tribe, reasons why it was considered mysterious, and other points of interest.
著者
石本 あゆみ
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-12, 1992-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

1.1987~1989年の9月下旬から11月初旬に,北海道風蓮湖と新潟県福島潟で標識調査中,アオジの翼長,頭頂羽の羽色及び,風切羽の換羽について調査した。2.北海道と新潟県をあわせて99個体の成鳥のデータを得たが,地域による翼長•羽色•換羽の違いは認められなかった。3.成鳥の頭頂羽の羽色は性の識別に有効であり,羽色が緑系は雄,茶系は雌となった。性差は自然翼長において顕著に現れ,雄の方が雌よりも翼長が大きかったが,若干の重複を認めた。また,初列風切は換羽を完了していた。4.幼鳥544個体を調査した結果,頭頂羽の羽色は緑系と茶系に大別でき,翼長は緑系の個体の方が茶系の個体よりも大きかった。しかし,その測定値は重複が非常に大きく,ばらつきも大きかった。5.幼鳥の Post Juvenile Molt は Complete Molt, Partial Molt 及び No Molt であった。頭頂羽の羽色に関係なく,最長風切羽が換羽完了している個体は,未換羽の個体より翼長が大きかった。6.幼鳥の翼長のばらつきの原因は換羽状態であり,翼長の長短から性を論じる場合には最長初列風切の換羽状態を考慮する必要がある。7.死亡鳥132個体の各部の測定,頭頂羽の羽色及び風切羽の換羽について調査し,生殖器の確認によって性別を判定した。この結果は生体で得られた推論を裏付けた。
著者
上田 恵介
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-46, 1994-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
296

Sperm competition is the competition between sperm from two or more males to fertilize the egges of a single female during one reproductive cycle. Recently many ornithologists have focused on this theme, and are studying many bird species by using biochemical methods (e. g. DNA fingerprinting). I review almost all of the important literature on avian sperm competition of the last decade, and discuss the evolution of social behaviour of both sexes through sperm competition. Sperm competition is an essential process of intrasexual selection which influences not only the characteristics of reproductive organ and mating behaviour, but also the mating system, social organization and life history strategy of birds. It is a co-evolutionary process between both sexes.
著者
梶田 学 真野 徹 佐藤 文男
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.148-167, 2002-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
37
被引用文献数
5 8

南西諸島の中部に位置する沖縄島には亜種リュウキュウウグイスC.d.riukiuensis(Kuroda1925)のみが留鳥として繁殖分布すると考えられてきた。しかし,我々の調査により沖縄島に生息するウグイスには上面が褐色の褐色型と灰オリーブ褐色の灰緑色型の二型が含まれていることが判明した。これら二型間の生息時期及び形態の違いを明らかにし,分類学的扱いを検討するたあに沖縄島で捕獲調査を行った。その結果,褐色型が留鳥,灰緑色型が渡り性の越冬鳥であること,褐色型の方が灰緑色型よりも翼差が短く,鼻孔前端嘴峰長が長いなど13の形態形質中9形質に有意差が認められること,翼式にも型間で明確な違いがあること,多変量を用いた解析でも形態的な差が明確に認あられることなどが明らかになった。両型の測定値から作成した線形判別関数式(正判定率雄100.0%,雌96.9%)を用いてリュウキュウウグイスのタイプシリーズ(14標本)の判別を行った結果,全て灰緑色型に判別されたことに加え,測定値と羽色の類似性から灰緑色型はリュウキュウウグイスと同定され,越冬期のみに沖縄島に生息する渡り性の亜種であること,分類学上異名(synonym)の問題を持っていることが示された。一方,羽色の類似性から褐色型は絶滅したと考えられている南大東島の固有亜種ダイトウウグイスC.d.restrictaと推測され,線形判別関数式を用いてダイトウウグイスのタイプシリーズ(2標本)の判別を行った結果,いずれも褐色型に判別された。測定値や羽色の比較でも両者は良く一致した。以上のことから,褐色型はダイトウウグイスと同定され,南大東島のみでなく沖縄島にも留鳥として分布し,沖縄島では絶滅を免れていることなどが明らかとなった。
著者
倉田 篤
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.358-370, 1966-06-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1.四日市南高校山岳部を主体として,八重山群島西表島の調査が実施され,1965年8月15日から25日にかけて,西表島及び仲ノ神島の鳥類を調査した。2.今回の調査により,本島産新記録種7種を含めて22科38種の鳥類を記録した。これらのうち本邦との共通種は32種,台湾とのそれは37種であり,亜種まで一致するものは,本邦について19種,台湾について21種である。これは本島産の鳥類の構成が地理的に近い台湾との共通性の深いことを示しているといえる。3.南西諸島は東洋区,旧北区との境界として,動物地理学上重要な地域であり,本島においても地理的及び生態的分布上の注目種として,スズメ,シマアカモズ,リュウキュウツバメ,アオツラカツオドリ,オオアジサシ,リュウキュウキジバトがみられた。4.西表島南方の仲ノ神島には,クロアジサシ,セグロアジサシ,オオミヅナギドリ,及びカツオドリの4種の海鳥が繁殖しており,総個体数約20,000羽を記録した。それらのうち,クロアジサシ,セグロアジサシの両種間にはすみ分けがみられた。5.仲ノ神島では毎年産卵期に採卵が行なわれており,今後貴重なる海鳥の大繁殖地として保護対策が早急に必要であると考える。
著者
星子 廉彰
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.108-110, 1997-10-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
3

An individual of subspecies of Snow Goose, Anser caerulescens atlanticus, was first observed in March and April 1994, and continued to be observed in November 1995, March and November 1996, and March 1997 in central and eastern Hokkaido, Japan. This bird moved with flocks of Whitefronted Goose Anser albifrons or Middendorf's Bean Goose Anser fabalis middendorffii.
著者
茂田 良光
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.309-313, 2003-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
16

Two Chinese Blue-and-white Flycatchers Cyanoptila cyanomelana cumatilis, an adult male and a first winter male, were banded on Kuroshima, Mishima-mura, Kagoshima-gun, Kagoshima Prefecture (30°50'N, 129°56'E) on 27 and 28 September 1997, respectively. This is the first authentic record for this subspecies of Blue-and-white Flycatcher Cyanoptila cyanomelana for Japan. The birds were probably migrants on their way to their wintering area. I showed the photos of the two birds, with the photos of C. c. cumatilis captured on China mainland and C. c. cyanomelana from Honshu, Japan for comparative identification.
著者
岡 奈理子
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.99-108_1, 1994-10-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

明治初期から昭和中期にかけて,日本の幾つかの海鳥繁殖地で,無秩序な採集圧が海鳥個体群を絶滅,あるいは減少させたことが知られているが,オオミズナギドリめ最大の繁殖地の一つ,伊豆七島の御蔵島では,長期にわたる島民の採集圧で個体群規模が縮少した傾向はみられない。島民がオオミズナギドリ採集を始めた時期と,個体群規模を減らさないで採集した方法とその利用法,および天然資源の持続的利用哲学を生み出した島の社会的背景を,聞き取りと文献調査で明らかにした。オオミズナギドリの御蔵島での採集利用は,文献の残る1700年代前半以降,捕獲の大幅規制が開始された1978年までの少なくとも250年間の長きにわたり,数万羽規模で毎年行われてきた。江戸時代は,島の男性が,その後は病人,幼児を除く島民全員が島の共同作業の一つとして参加した。島民はオオミズナギドリを採集するにあたり,次の主な狩猟規則を島社会の不文律として設けていた。1)雛のみ採集する。2)採集日を巣立ち期前の11月初頭の,毎年2日間(1960年以前は3日間)に限定する。3)採集日以外に巣穴に干渉して,繁殖妨害をしない。この規則に違反すると,採集した鳥は没収され,その家族と共に,以後3年間,採集を禁止された。こうした不文律の採集規則が乱獲や密猟の発生防止に大きく寄写し,数百年にわたる採集圧にも関わらず,日本でも有数の繁殖個体群規模が御蔵島に維持されたと考えられた。オオミズナギドリの秩序ある採集の背景には,生活物質の公平な配給を受ける見返りに,島のあらゆる作業を共同で行う普持米制度の伝統がある。また,独自の家株制度の施行で人口が明治初期まで比較的低く抑えられたことも,資源の食いつぶしの回避をはかる資源管理型御蔵島社会の一つの事例としてあげられる。採集された雛は,各家庭で精肉され,肉,皮,内臓,骨に至るまでのほとんどの体部が伝統的保存法で数カ月間保存され,自家消費された。一部の塩蔵肉や塩辛は隣島の三宅島島民との食料,物資の交換に使われた。島の生計は世代を継いだ全島民による営林事業が主体であったが,今世紀前半からの柘植(つげ)材の用材価値の低下につぎ,1978年からのオオミズナギドリの伝統的採集の外圧的廃止は,森林生態系の永続的利用を実践し,共生してきた村人に,伝統的な生活習慣を断っことを強い,最近にみる急傾斜地への大型道路敷設事業導入による森林破壊と,オオミズナギドリの生息地の破壊を引き起こす背景になっていることを指摘した。生態的知識に基づく自然物の秩序ある採集は,自然との共存文化として温存すべき理由を,鳥島や北海道の渡島大島などにみる出稼ぎ的採集で海鳥の繁殖個体群を衰亡させた略奪的自然利用に対峙して見いだせる。

3 0 0 0 OA 日本のワニ

著者
高島 春雄
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.300-302, 1955-12-25 (Released:2008-11-10)
被引用文献数
1 1

The crocodilians are not the Japanese animals but formerly they were included in the fauna of our country as the estuarine crocodiles live in Palao Islands, Micronesia which were at that time under Japanese Mandate.I found three examples, old and new, among the literature about the crocodiles which were found drifting in the neighbouring sea of Japan but the reason why they drifted this far is unknown.The first crocodile was caught in 1744 off the coast of Iwojima I., Kagoshima Pref. It was presented to the then Feudal Lord Shimazu, the head of Satsuma clan. This was presumably an estuarine crocodile.The second one was a crocodile caught at Amami-Oshima I., Kagoshima Pref. in February 1800. There exists a color painting of this crocodile made at that time from which I can clearly identify it as an estuarine crocodile.The third one was caught in a fishing net off the Toyama Bay, Toyama Pref. in November 1932. This was perhaps the same species.No live crocodilians were introduced in this country before the Meiji Era. But during the Taishô and Shôwa Era crocodiles, alligators and gavials were brought in one after the other to the zoo of Japan.
著者
小杉 昭光
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.2, no.15, pp.89-98, 1960-12-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
4
被引用文献数
10 7

The food habits of the following species of Herons in Saitama Prefecture were analyzed from their stomach contents: Egretta alba modesta, Egretta intermedia intermedia, Egretta garzetta garzetta, Bubulcus ibis coromandus, Nycticorax nycticorax nycticorax. Their common feeding grounds were rice fields but specific difference of food items were found, as shown below:E. alba modesta Crustacea 63.5% Pisces 27%E. i. intermedia Insecta 44.4% Pisces 23.2% Amphibia 18, 4%Crustacea 11.4%E. g. garzetta Crustacea 41.8% Piscea 27.0% Insecta 26.5%B. ibis coromandus Insecta 92.2%N. n. nycticorax Pisces 56.0% Insecta 28.4% Amphibia 9.8%Nearly all of their foods were animal matter, except a few crops of rice which were accidentally eaten. They thus have no immediate relation to the rice plants, but are beneficial, feeding on American crawfish, locust, mole-cricket and gadfly, etc, though the Night Heron is rather noxious much eating fishes and amphibia. Difference of food items was found compared with Ikeda's result obtained from a coastal area.
著者
黒田 長久
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-59, 1981
被引用文献数
1

This paper was first planned in 1971 and was written in 1975 (marking the author's age of 60th) to compare avian and mammalian "societies", based on socio-ecological and -ethological analyses, independently of Wilson's "Sociobiology" (1975); with the following contents:<br>I "Animal sociology"<br>1. Animal societies: its two viewpoints<br>a. Phenotypic sociology b. Functional sociology<br>2. Animal societies: its functional analysis<br>3. Animal societies: its evolution<br>a. Origin and functional evolution b. Phenotypic evolution<br>II. Avian and mammalian societies<br>1. Comparative characteristics<br>2. Evolutionary retrospects<br>3. Distributional property<br>4. Life diversification<br>a. Mammalian b. Avian<br>5. Behavioral diversification<br>a. Brain structure b. Brain function c. Instincts and intelligence b. Instinctive grades: 1) Physiological (individual or maintenance) behaviors 2) Social behaviors (a) Instinctive reflex beh. (= IRM) (Primary inst. beh.) b) Instinctive responding beh. (Secondary inst. beh.) c) Mental instinct-controlling beh. (Tertiary inst. beh.) d) Psychological reflex beh. (Spiritual shock beh.) e) Mental instinct-suppressing beh. (reductive inst. beh.) f) Learning g) Imprinting h) Tool-using i) Coopreative behavior<br>III. Social development<br>1. Flock-vs family-base life<br>2. Dominance and leadership<br>3. Individual and population (groups)<br>4. Group-making property<br>a. Avian group life: 1) Family group 2) Areal group 3) Group territory 4) Colony<br>b. Mammalian group life c. Human group life<br>5. On group selection<br>IV. Postscript<br>The avian and mammalian societies, despite common general physiology, have evolved toward basically "aerial-diurnal" and "terrestrial-nocturnal" contrasted lives.<br>The avian society is aberrantly specialized and could be neglected from the quadrupedal evolutionary line leading to mammalian society, but the avian flock-based, monogamous social structure with sexual cooperative division of work and the mammalian mother-filial family-based, polygynous, despotic and graded social structure, are compounded in the human society, which, beside this biological social base, is put under artificial restraint and constraint of laws, religions, ideologies of nations (or races). With this contradictions, the world human societies inevitably contiune their cooperative efforts, but with endless competition.
著者
田中 裕
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.55-62, 1986-09-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2 2

1.東京大学海洋研究所淡青丸•白鳳丸航海中に行なった海鳥の目視観察に基づき,ハジロミズナギドリの北太平洋における分布と分布域の表層水温との関係を調べた。2.ハジロミズナギドリは繁殖期には北太平洋西部の極前線域に,非繁殖期には北太平洋を東西に広く分布していた。3.ハジロミズナギドリが最も陸地に接近したのは,2月の伊豆諸島三宅島周辺海域と9月の三陸沖100浬の海域であった。4.分布域の表層水温は,8~28°Cの範囲にあり,最多分布域は5月の8°Cの水温帯であった。5月以外は,12~26°Cの範囲に平均的に分布していた。このことからハジロミズナギドリは繁殖地環境と同じような温暖域を好適水温としながら,一方,寒冷域も生息場所として選択できる種類であると考えられた。
著者
山階 芳麿 真野 徹
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.147-152_3, 1981-12-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
5
被引用文献数
14 22

沖縄島北部の通称ヤンバルと呼ばれている丘陵地帯に,地上を歩くクイナの1種が居る事は少し前から知られていたが,山階鳥類研究所の真野徹外数氏が環境庁の鳥類標識調査事業の一環として国頭郡奥間において,1981年6月18日から7月7日にかけて調査を実施し,そのクイナの成鳥及び幼鳥各1羽の捕獲に成功した。これら2羽については,各部を詳細に調べた後,足環をつけて捕獲した元の場所に放した。又これより前にフエンチヂ岳附近の林道脇にて拾得された1個体を名獲市の友利哲夫氏が標本として保存していたが,これも今回捕獲したものと同種である事がわかった。これら3個体は羽色がRallus torquatus及びその亜種に似ているが,嘴と脚が赤色でやや大きく,それに比例して翼と尾が長くなく,又最外側の初列風切羽はそれ以外の初列風切羽より短いなどの点が異なるので,今迄に発見された事のない新種のクイナと断定し,ここに新種として記載する。
著者
三島 冬嗣
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.397-410, 1968-12-30 (Released:2008-11-10)

Distributional and breeding records by specimen or photographic evidences, additional to the 1958 edition of the handlist of Japanes birds are given of 69 species and one hybrid Lanius cristatus cristatus ×lucionensis. Many records from Riu Kiu Is. are included. Three notes are added: 1. Subspecies of Passer montanus many be devided into kaibatoi (Sakhalin to Yakushima), saturatus (Amami-Oshima to Ishigaki I.) and taivanensis (Iriomote to Formosa). 2. Iriomote I. should be omitted from the distributional localities of Rallina eurizonoides sepiaria and Gallicrex cinerea.