著者
安藤 健 井上 良平 前藤 薫 藤條 純夫
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.201-210, 2006-08-25
参考文献数
13
被引用文献数
1 10

ハスモンサムライコマユバチMicropliis manilaeは熱帯・亜熱帯に広く分布するものの国内では未記録種であったが、著者らは本種が沖縄本島でハスモンヨトウ幼虫に寄生していることを見いだした。本種が単寄生性の内部寄生蜂であることを確認した上で、産卵一発育に及ぼす温度の影響を検討した。本種は、ハスモンヨトウの1-4齢には寄生し、幼虫の摂食を大幅に抑制したが、卵、終齢前齢(5齢)および終齢幼虫にはほとんど寄生できなかった。15℃から30℃までの恒温条件下での発育比較から、本種の卵から羽化までの発育零点は11.5℃、有効積算温度は217.4日度と算出された。産卵と寄生成功は15℃の恒温下では大幅に低下したが、1日の内8時間あるいは12時間を10あるいは15℃にしても、日平均温度が15℃になるように飼育すれば、そのような支障は消失した。1頭の雌成虫は、20-30℃では、2週間に渡って300個以上の卵を産み、産卵させなければ、15℃では60日間生存した。温度に対する本種の発育や増殖能力への影響を、ハスモンヨトウの幼虫寄生蜂であるギンケハラボソコマユバチと比較した。