著者
井元 拓斗
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.83-105, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
61

連立政権に参加する政党は、連立パートナーをどのようにして統制するのだろうか。近年の研究では、委員会制や副大臣などの手段を用いることで、連立相手の大臣に対する監視が行われていることが指摘されてきた。本研究はアイルランドを対象とし、書面での議会質問という手段が連立相手への監視に用いられているという仮説を検証する。2011~2016年のフィネ・ゲール/労働党政権を対象とした計量分析の結果、連立相手の大臣に対しては議会質問の提出件数が増加していることが明らかになった。また、財務大臣への質問を対象とした量的テキスト分析からは、連立相手の大臣に対しては選挙区へのアピールを目的とした質問ではなく、対立争点について情報を引き出す内容の質問が多く提出されていることが分かった。以上の結果は、議会質問という監視手段によって、大臣が連立内の合意から逸脱することを防ぎ、連立政権での協調的な政策形成が可能となっていることを示唆する。