- 著者
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井口 佳重
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.2, pp.16-30, 2009-04-01 (Released:2017-07-28)
明治33年4月,大阪毎日新聞社社長の原敬は「ふり仮名改革論」を発表し字音仮名遣いの改革を試みる。その後,この改革案での仮名遣いが「現代かなづかい」制定まで同紙上にて実践される。大正期に首相となる原は「臨時国語調査会」を設置し,総会では「仮名遣改定案」が提出されるが,その背景に新聞の仮名遣い改革があった。字音の表音的仮名表記を目指す原改革案では,(1)同年出される小学校令施行規則「新定字音仮名遣」(棒引き仮名遣い)での長音符号「ー」は使用しておらず,(2)活字印刷の際生じる振り仮名の文字数の問題から,ウ列・オ列の拗長音の表記法に特異性を有する。同時期の新聞各紙を調査,検討した結果,原改革案による表音的仮名遣いは各紙で採用され,他新聞各社でも仮名遣い改革が実行されたことが明らかとなった。こうした実態から,新聞各社が積極的に国語の施策に関与し仮名遣いの整理を促したことが推量される。