著者
井口 正彦 大久保 ゆり
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.39-55, 2012-10-26

本稿は2011年12月に南アフリカのダーバンで開催された第17回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP17)における会議プロセスに注目する。京都議定書によって義務づけられている削減目標の期間は2012年で終了するため、COP17では2013年以降の国際的な温暖化対策への一刻も早い合意が期待されていたという意味で重要な会議であった。このような背景に対し、本稿では締約国が自主的にボトムアップ式で目標や対策を決めるという流れと、締約国が法的拘束力のもとに一定のトップダウンで目標や対策を定めていくという、二つの流れに着目しながらCOP17における交渉プロセスを詳細に分析する。この結果、COP17では法的拘束力を持たず、あくまで自主的にボトムアップ方式で温暖化対策を目指したコペンハーゲン合意から、法的拘束力のある次期枠組みへの交渉に向けて舵を切った会議であったことが分かった。つまり、COP17ではすべての国が法的拘束力のある枠組みの中で科学的知見に沿った削減目標を掲げるという機会を提供したといえる。このような結果を踏まえ、今後においてはトップダウンとボトムアップの両者のバランスを考慮した「衡平性」の議論が交渉の中で重要な論点になることを提起する。