著者
井口 毅裕 近藤 誠一 久恒 和仁
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.805-812, 1989
被引用文献数
1

アユ,ウナギ,サケ科魚類のビブリオ属細菌感染症の原因菌の1つとして,<i>Vibrio anguillarum</i>が知られ,本菌は生化学的・血清学的性状の相違により,A, B, Cの3種に型別されている。今回,血清型Bに属する<i>V. anguillarum</i> PT514株のO抗原リポ多糖(LPS)を取り上げ,その化学的性状,特に分子構築について検討した。LPSの全多糖体画分(degraded polysaccharide: DPS)からSephadex G-50ゲルクロマトグラフィーによつて分画したO抗原多糖鎖部分は多量のグルコース(Glc)を含み,PT514株LPSの多糖鎖はグルコースホモポリマーを基本骨格とすることが示唆された。また,LPSの弱酸加水分解によつて多量のフルクトース(Fru)と4-アミノ-4, 6-ジデオキシーグルコース(4-amino-4, 6-dideoxy-Glc)が遊離され,PT514株LPSは他の血清型菌株のLPSとは異なる性状を持つことが示された。多くのグラム陰性菌LPSのコア部分の共通構成糖である2-keto-3-deoxy-octonate (KDO)は常法では検出されず,他のビブリオ科細菌と同様,強酸加水分解によつて初めてKDOのリン酸化誘導体が検出され,リン酸化KDOは広くビブリオ科細菌LPSに分布することが示された。