著者
井口 秀作
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、フランスの第三共和制、第四共和制、第五共和制を素材として、現代市民憲法における国民投票制のあり方を検討した。まず、前提として、フランス革命期の二つの主権論と国民投票制および、両ナポレオンのプレビシットを確認したうえで、第三共和制、第四共和制、第五共和制のそれぞれの憲法の下における国民投票制の動向を検討した。フランスでの展開は、第三共和制憲法における全面的拒否、第四共和制における部分的導入、第五共和制憲法における量的拡大とまとめることができる。しかし、このことは、その展開が、単線的な発展であることを意味するわけではない。現代市民憲法の一つの特徴である行政国家現象の影響を受け、「行政国家型国民投票制」とよびうる形を伴いつつ、国民投票制が展開しているのである。とりわけ、現代の第五共和制憲法においては、その憲法全体の行政国家適合的な構造に規定されて、このような性格が色濃く出ている。このような国民投票制に対しては、フランスでは、プレビシット論の批判があったが、近年においては、プレビシット論の比重が下がっている。しかし、これは、プレビシットの危険性が無くなったことを意味するわけではなく、第五共和制において、国民投票制の死文化・空文化の時期が長期に渡って存在したことの反映である。空文化か、プレビシットの悪用かの、二者択一ではなく、現代市民憲法における、別の国民投票制のあり方を探ることが今後の課題である。